近年作品に恵まれなかったキアヌ・リーブスが、満を持して主演したクライム・アクション作品であるが、主人公がたぎるような情念と憎しみに満ちて裏社会の組織に立ち向かっていく動機に若干弱いところがあって、消化不良の感がある内容となっている。
裏社会で伝説の殺し屋として名を馳せたジョン・ウィックは、愛する女性と出会い引退したが、5年後そのヘレンは病死し傷心の日々を送っていた。
だが、ヘレンが残した愛犬と暮らしている内に平穏な心を取り戻しかけた時に、かつてのボスであるロシアン・マフィアのヴィゴ・タロソフのドラ息子ヨセフがジョンの愛車のマスタングに目をつけ取り巻きの若い者と共にジョンの家に押し入り、ジョンを痛めつけたて愛車を強奪した上に愛犬を殺してしまう。
己れの愛するものすべてを失ったジョンは、憤怒の塊となってヨセフたちに復讐する準備をはじめた。ヨセフたちがマスタングを持ち込んだ修理屋の知らせによってその事を知ったヴィゴは戦慄する。かつて自分の配下であったジョンの気質を知るヴィゴは、ジョンに和解を求めるが無言で電話を切られたことによって、ジョンの決意の固さを知り組織のすべてをかけて対抗するしか術がないことを覚悟した。
ジョンは裏社会の実力者が経営するホテル(このホテルでの殺生事は裏社会の掟で絶対タブーとなっている)に逗留し、ヨセフの命を狙う決意を示す。
ヴィゴは、ドラ息子であるが跡取りのヨセフを守るために、掟を承知の上でこのホテルに腕利きの殺し屋を送り込みジョンを襲わせるが失敗してしまう。
自分がどんなに凄い奴を襲ったかも理解しないヨセフたちは、父親の忠告をも嘗めて退廃的な会員組織のクラブで大騒ぎしている。だがクラブの周りはヴィゴの指令で鉄壁の守りを固めている。それを承知の上でのジョン・ウィックの壮絶な復讐が始まろうとしていた…。
カーチェイス、銃撃戦、素手での格闘技、すべてのアクション技術を全編にわたって真断なく詰め込んだクライム劇は見応えはあるものの、ジョン・ウィックの激怒の心への心理的描写が少し唐突すぎて、見る者が感情移入するには少し弱い作品である。
残念ながらこの手の映画として並な出来内容となってしまっていた。
ぼくのチケット代は1,900円を出したい作品でした。
星印は2つ半差し上げます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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