石田あゆみの人気コミックの映画化。
アニメ・TVドラマで人気を博し、その余勢を買って映画化されたタイム・スリップ時代劇である。映画はTVドラマの完結編という形で進行するので、はじめて映画で内容を知る観客のために、これまので粗筋が紹介されるという親切?な出だしからはじまるので面食らわずに見てほしい。
現代の高校生がタイム・スリップし、身体と心が弱い織田信長から頼まれニセの信長となり、その現代的自由の発想から織田家の武将たちの心を射止め、戦後時代の一大勢力を持つ。本物の信長は明智光秀となり信長の部下として仕える。信長に仕える羽柴秀吉は自分の村を焼き討ちにした本物の信長に復讐を誓っていた。
そして、高校生サブローである信長は天下を取る最後の正念場、石山本願寺の戦いに赴こうとしていた。だが同じようにタイム・スリップしたヤクザから松永弾正から、日本史に疎いサブローの信長に間もなく死ぬ運命が訪れることを知らされ動揺する。
信長に復讐心を持つ秀吉の画策は最終段階に入っており、信長の恋人である帰蝶を利用しようとしていた。一方サブロー信長は、家臣の武将たちや帰蝶の絶対的支持に歴史上の運命に逆らい、この時代で生き抜くことを決心し、帰蝶との結婚式を本能寺であげることを告げ京都に赴いていくのだったが・・・・。
現代から戦国時代にタイム・スリップした高校生のサブローが、織田信長そっくりの顔をしていたばっかりに、ひょんなことから信長となり、現代人の自由な心で中世の規範を次々と改革し、織田家の家臣たちや信長の婚約者・帰蝶の心まで射止め、新しい時代を作るために奮闘し、戦国期随一の強力軍団となる内容は、現代のベンチャー企業の会社を思わせる設定はコミックらしい斬新な発想である。ましてや本能寺で信長を討つ明智光秀が本物の信長であり、秀吉がその本物の信長の初陣での残虐な仕打ちの被害者であり、その復讐のため織田家の家臣をしている、という奇想天外な人物設定は、山田風太郎をも思わせる面白いものでありながら、乾いた描写ではなくウェットなシーンをラストで多用していたのは閉口してしまった。せっかくセットや衣装・武具などに豪華な費用をかけて作っているのに、この斬新な発想を演出で使いきれずラストにいくほど、ウソっぽい内容になっていったのは残念であった。
ぼくのチケット代は、1,800円ぐらいかなと思う作品でした。
星印は、2つ半差し上げます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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