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サウルの息子

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   2016/03/01

衛藤賢史のシネマ教室

世界3大映画祭のひとつである、フランスのカンヌ国際映画祭(他の2つはイタリアのヴェネチア国際映画祭とドイツのベルリン国際映画祭)で2015年度・最優秀作品賞<グランプリ>を獲得した作品であり、本年度のアカデミー外国映画賞にもノミネートされており、最有力候補の呼び声も高い作品でもある!
物語の舞台は、1944年のアウシュヴィッツ収容所。
ハンガリー系ユダヤ人のサウルは、ゾンダーコマンドと呼ばれる同胞のユダヤ人の死体処理に従事させられる仕事についている。そのゾンダーコマンドのメンバーも数か月働かされた後、殺される運命が待っている。ナチス・ドイツもこの時期、敗戦の色濃い時代で、ゾンダーコマンドの連中は生き延びている間に脱走しようとする秘密計画をしていた。
そんな中、サウルは新たに他から送られてきたユダヤ人をガス室で抹殺した死体処理の作業に従事していた。ところがまだかすかに息のある少年が見つかり、サウルの目の前で殺される。その少年を見たサウルは驚く、どうも自分の息子とおぼしき容貌なのだ!
ドイツ軍は、死体は焼却処理することになっている。ユダヤ教の教義で火葬は死者が復活できないとされている。このような状況でサウルができることは、ラビの祈りのもと土葬することだけ。しかし、厳重に管理されている収容所では、それすらも困難な事であり、発覚すればサウルだけでなくゾンダーコマンドにも累が及び殺される。
だがサウルの決心は堅かった。息子とおぼしき少年をユダヤ教の教義にのっとって埋葬させる事だけが自分の人間としての務めであり人間としての誇りとなる。
困難な状況の中、サウルはラビを探しはじめ、さらにゾンダーコマンドの抹殺も近づく情報も入る中、サウルは必死で方法を模索するのだが・・・。
全編サウルの視線と行動を中心に据えた演出方法は、遠景描写の極端な省略により置かれた状況が、サウル同様われわれ観客にもよく見えない!そのため極度の緊張感を強いられる内容となり手に汗握ることにもなるし、ユダヤ人の収容人と同じ肌感覚を覚えるのだ。人間が人間を物として扱う不条理さにヘドが出るような覚えを持つ内容を、極端なアップを多用したこの作品は、同時にどんな状況にあろうと人間の精神の尊厳を鮮烈に訴える映画にもなっている事はラウルの視線の強烈な強さが象徴しているのだ!辛い内容だが、映画の大事なジャンルとしての訴求力を持つ大切な作品となっている。
ぼくのチケット代は、2,000円出したい作品です。
星印は、4つ半差し上げます。

5点満点中4.5点 2000円

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