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エヴェレスト 神々の山嶺

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   2016/03/15

衛藤賢史のシネマ教室

夢枕獏の長編小説をよく整理した脚本(加藤正人)、エヴェレストの壮大なスケールを余すところなく捉えた撮影(北信康)、無駄のない演出に終始した平山監督のベテランらしい力量、そして阿部寛、岡田准一の大人としての風格を漂わせる演技力、などの総合力がよく発揮された娯楽映画の佳作となっている。
1993年。ネパールの首都カトマンズで山岳カメラマンの深町誠は、ジョージ・マロリーの物と思われるコダックの小型カメラを買い取る。が、それは老シェルパのツェリンからの盗品で空しく返した深町だが、ツェリンに同行した男が伝説のクライマー・羽生丈二であることを発見する。
マロリーのカメラらしい物を、この2人がなぜ持っていたのか?帰国した深町は、羽生に暗い過去の噂がある事を知り、つてを求めかつての仲間たちに会い調べはじめる内、羽生が唯一弟のように可愛がったという岸という青年の存在が浮かび上がる。岸の滑落死の原因が羽生にあったというのだ。そんな時に妹の岸・涼子が噂を聞いて深町を訪ねてきた。兄の死をきっかけに羽生と交際をはじめた涼子も自分の前から突然姿を消した羽生を探していたのだ。
マロリーの小型カメラと伝説の羽生。記事になると見込んだ山岳雑誌の編集長からの資金提供で深町と涼子はカトマンズに飛ぶ。
そこで羽生とツェリンに探し当てた深町は、羽生がエヴェレストの単独無酸素登頂、それも最も厳しい冬季の南西壁からの前人未到の登山を計画していることを知る。
深町は、山岳カメラマンの誇りとして、同行することを決意する。それは失敗すれば自分も死ぬことを意味している。そしてふたりの前人未到への挑戦がはじまる…。
複雑な物語構成を持つ夢枕の原作を、大胆かつ視覚的内容にまとめたこの作品は、映画の持つ視覚的魅惑を現地ロケーションの魅力、俳優の魅力、そしてコンパクトな内容としての分かりやすい魅力を持って、大画面の中に結実した佳作となっている。
特にエヴェレストの5200mまでの高さの撮影は、世界のどこへ出しても称賛されるであろう臨場感あふれるものであり、同時にそこで演技する俳優の負担は想像できない程きつい物であったろうと言うことは画面からも発散されてきた。
スタッフがここまで体を張って魅力ある映画にしたいという意気込みがヒシヒシと伝わる内容であった。
そのスケール感から、映画化不可能と言われた小説に挑んだ気概のある作品だ!
ぼくのチケット代は、2400円出してもいい作品でした。
星印は4つ差し上げます。

5点満点中4点 2400円

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