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殿、利息でござる!

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   2016/05/17

衛藤賢史のシネマ教室

「武士の家計簿」の原作者である磯田道史の「無私の日本人」の中からの一遍<穀田屋十三郎>を元にして中村義洋監督が映画化した作品である。
藩の財政難のあおりを食らって、窮乏のどん底に落ちた宿場を救うため、私利私欲を捨て頑張る穀田屋十三郎を中心とした人々の、見返りを求めない篤実で無私な心を描いたこの作品は、たぶん皆さんの心の琴線にさらりと触れてきて清々しい気持ちにさせてくれるであろう内容になっているのだ。そしてこの話が実話である、というのも日本人としてうれしい気持ちになる映画でもある!
18世紀半ば、10代将軍・家治の時代。仙台伊達藩のとある小さな宿場村・吉岡宿。伊達藩の財政は窮乏に陥り、百姓や町人への容赦ない重税を課したため、吉岡宿は破産と夜逃げが相次いでいた。小さな酒造業を営む穀田屋十三郎は、このままでは村が立ち行かないと、命を懸けてお上に訴えようと決心したときに、茶業を営む智恵者の篤平治から藩に金を貸して、その利息で宿場村を立て直す、というとんでもない案を聞かされ、本気で実行しようと考える。しかし、貸そうとする金額は千両(約3億円)という大金。しかも、それはやり方を一歩誤れば死刑という危うい計画だし、千両という大金は個人でできるものではない。十三郎は案は出したもののオロオロする篤平治と共に手助けしてくれそうな宿の有力者を求めて奔走する。大金を出しっぱなし、もし成功して利息を取れても宿場の税のために使う、つまり自分の家は破産するという覚悟がなければならない。この計画に乗ってくれるのは無私の心がなければならないのだ!だが、子々孫々まで宿場を守りたいという有志が、十三郎の心意気を感じて賛同し名乗りをあげてきた。
その中に十三郎の弟で宿場いちばんの金持ちだが強欲の噂の高い浅野屋甚内もいた。
果たして、下々の者が藩の殿様に金を貸し利息を取ろうとする、不敬罪にも当たろうとるすこの危うい計画は成功するのだろうか?
しかし、これしか宿場が生き残り暮らして行けるという手段はないと覚悟した、十三郎たちは必死で金を貯め、藩の許可を取ろうと画策していくのだが・・・。
随所にユーモア感覚を取り入れ、この破天荒な計画に邁進する人々の姿を十三郎を軸にした群像劇で描くこの作品は、ぼくらに強欲を捨て去り無私の精神を貫く人々の知識・智恵のある広い視野に富んだ江戸時代の庶民の心意気の凄さを教えてくれる。我々日本人は、こんな人々の子孫であるという事を誇りに思う作品ともなっているのだ!
ぼくのチケット代は、2,500円出してもいい作品でした!
星印は、4つ差し上げます。

5点満点中4点 2500円

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