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2016/06/27
劇作家、脚本家、俳優として、映画・演劇・TV界で超一級の仕事を堅持し続けている、クドカンこと宮藤官九郎の映画監督4作目の作品は、いかにもクドカンらしいファンキーさとシュールさを詰め込んだ内容となっている。
ごくフツーの高校生・大助は、憧れのひろ美と近づけるかもしれない修学旅行でいい感触を得て有頂天になっていた。しかし、帰りのバスが運転を誤って道路から崖下へ転落してしまった。
そして、目覚めた大助が居た場所は、何たることぞ!生前ワルい行いをした人間たちが責め苦を受けるホンモノの地獄だった。そこで待ち受けていたのはコワ~い地獄の番卒の鬼たち。まだ人生の5分の1も経ていない上、ファーストキスさえした事ない大助は地獄に送られるのは不当だとブーブー言うが相手にしてくれない。地獄農業高校で働く羽目になった大助に、地獄ロックバンド<ヘルズ>のリーダーで地獄農業高校の軽音楽部の顧問でもある赤鬼のキラーKから、エンマ大王の裁定で7回の輪廻転生の機会を与えられる裁判の事を聞かされる。エンマ大王にアピールするには、どうも<音楽>が一番と知らされた大助は、キラーKのバンドに入り、地獄の鬼特訓を受け、首尾よく合格!
だけど輪廻転生も実はそんなに甘いものではなく、すぐには人間になれないらしく、大助も鳥やら虫やら動物になって現世をさ迷いながら、憧れのひろ美ちゃんの消息を探し回る内に、人の世の定めの哀しみや喜びなどを知りはじめる。そしてキラーKすらも最初から鬼でなく、大助がよく見知っていた人間であることも知ってしまう。
何回も輪廻転生を繰り返しながら、憧れのひろ美ちゃんを探す大助にも7回の転生の期限が迫ってきた。さあ!大助は<人間界>への<生き返り>ができるのか?
今は友人となったキラーKのバンド仲間の鬼たちの助けを借りながら、大助の輪廻転生のハチャメチャな大冒険が続くのだが…。
地獄・極楽、あの世この世を縦横無尽に駆け巡る内容は、クドカンの才気があちこちに発揮され結構楽しんで見たのだが、いかんせん少しクドカン自身の楽しみが先行しているようなゴチャゴチャ詰め込みすぎた脚本構成に、ついていけない観客もかなりいると思う作品となっている。さらに特殊メイクが濃すぎる地獄シーンでは出演俳優が誰やらまったくわからないし、その辺も凝りすぎも見る人が呆気にとられる原因となっている。
ぼくのチケット代は、1,700円かなと思う作品でした。
星印は、2つ半差し上げます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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