乗員、乗客5000人以上の巨大宇宙船で、90年も早く人口冬眠から目覚めてしまった男女ふたりと、コメディリリーフ役のアンドロイド、そしてワンポイント・リリーフ役の乗員、という4人だけで綴られる異色のSF作品「パッセンジャー」は、多少強引な設定が見られるものの、娯楽作品として一応の水準を保つ作品となっている。
近未来、過剰な人口増大とテクノロジーの発達で、夢を求めて5千人の乗客と258人のクルーを乗せた宇宙船『アヴァロン』号は、宇宙空間を浮遊するクラゲのような形態で120年先の惑星を目指していた。出港して30年、乗員・乗客は全員人口冬眠状態でアヴァロン号は自動操縦の中、ある予期せぬアクシデントが発生する。
そしてエコノミー乗客である修理技師のジムだけが人口冬眠から目覚めてしまった。惑星への到着にはまだ後90年。呆然とするジム!この巨大宇宙船でひとりで一生を終える残酷な運命に置かれたジムは、修理技師の腕であらゆる装置に挑戦するが歯が立たない。わずかな救いは、バーテンダーのアンドロイドのアーサーとの会話だけ。ジムはこの絶対孤独に耐え兼ねある決心をする。そしてジムより一年遅れてファースト・クラスの才色兼備の作家でジャーナリストのオーロラが人口冬眠から目覚めた。
オーロラはこの異常事態に精神が混乱し錯乱状態に陥るが、ジムの存在により、この宇宙船内で一生を終える事を覚悟していく。
上流階級のオーロラと、労働者階級のジムであったが、ふたりは次第に愛し合う仲になっていった時、アンドロイドのアーサーの言葉でふたりは険悪な仲になる。
そんな折、アヴァロン号は、あの予期せぬアクシデントから船体がしだいに軋みはじめとんでもない事態が発生してしまう。
アヴァロン号の運命は、人口冬眠から目覚めたジムとオーロラの手に委ねられたのだ!
ふたりのこの危機的状況を乗り切ることが出来るのか…。
人間はたったひとりという絶対孤独に耐えられない。だがふたりの人間、それも男女であれば心は平安な状態を保つことが出来る!その流れをドラマの縦軸にして、目を見張るような豪華宇宙船の内部を脇役としてデザインしきった「パッセンジャー」は、SFとして異色の内容となっていた。所々には荒い設定はあるのものの、娯楽作品として観客であるぼくらを楽しまさせてくれる手際は合格点を出していいと思う。
ぼくのチケット代は、2,000円出してもいい作品でした。
星印は、3ツ差し上げます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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