「プロメテウス」は哲学的示唆を盛り込んだテーマが仇となり、内容的に未消化の作品となったが、この作品はその後日潭となる。
巻頭シーンで「プロメテウス」のアンドロイドのデヴィッドが登場する事によって後日潭と分かるようにしている(だけど前作を見てない人にとって分かりづらいかも)が、今回はエンタティナーな作劇方法に徹しており、なぜ<エイリアン>が誕生したかがよく分かる内容となっている。
宇宙船<コヴェナント>号は、2000人の入植者を眠らせて、地球の環境に似た惑星オリガエ=6に向かって7年の旅をしていた。クルーも眠っているので、アンドロイドのウォルター(マイケル・フェスベンダー)が船内のすべての業務をしている。しかし、途中予期せぬアクシデントでクルーのみが強制的に起こされ、危ういところで助かる。このクルーは全員カップルで構成(目的地に着いたら、入植者同様その惑星で住むため)されていたが、船長は覚醒時のマシーンの事故で死亡してしまう。その配偶者ダニエルズ(キャサリン・ウォーターストーン)は悲しみを押さえ業務に勤しむのだが、その船内の電波が奇妙な音をキャッチした。それは地球の音楽であり、その電波を発する惑星は<プロメテウス>で着陸した場所だった。ダニエルズはその惑星に言い知れぬ不安を覚え、あくまで7年先のオリガエ=6に行くことを主張するが、代理船長は7年という長い旅よりも人間の音楽の聞こえるその惑星へ行くことを命じる。が、その惑星で生き延びていたのは<プロメテウス>のアンドロイドのデヴィッド(マイケル・フェスベンダー)だけだった。だが、その惑星には想像を絶する脅威と恐怖がクルーたちを待ち受けていたのだ・・!
リドリー・スコットの前作「プロメテウス」を見てない人にとって、前作を見たという前提に立った作りなので、若干分かりづらいかもしれないが、今回は示唆的なシーンはなく、一直線にエイリアンの誕生秘話という内容としているので、話が進むにつれ頭の整理がつくようになっている。そしてドラマとしてはこの作品の方が「エイリアン」ファンにとって理解される内容となっていると思う。しかし、あの伝説的映画「エイリアン」と比較すると、もう耐性が出来ているので、ウワ~ッと思わずのけ反るような恐怖感は稀薄になるのは仕方ないかもしれない。しかし、78歳のリドリー・スコット監督の衰えを知らない作劇術に敬服でした!
ぼくのチケット代は、2100円出してもいい作品でした。
星印は、3ッさしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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