1982年に公開された「ブレードランナー」(監:リドリー・スコット)は、興行的には不振であったが、以降につづく終末的世界観を描く近未来SFの先駆として評価されレジェンドとなった作品であった。この作品は2019年のLAを舞台としたF・K・ディックのSF小説「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」の映画化であったが、今回の作品は、その30年後の2049年のLAを舞台とするオリジナルと言っていい作品であり、163分という長尺の内容だが、少しも退屈させない秀作となっている!
LA市警のブレードランナー・K(ライアン・ゴズリング)は、今日もレプリカン・ハンターとしての職務を黙々と果たしている。帰宅したKを待っているのはジョイ(アナ・デ・アルマス)というヴァーチャル世界の恋人。Kの良き相談相手でもあり、実在する自分の躰を持ちたいと願っている。その頃、Kの上司ジョシは、Kが発見した不審な箱に収められた30年前のレプリカントの骨に注目し、Kに調査を命じる。Kは骨と共に残された毛髪を調べてもらうため、レプリカント製作会社に行きオーナーの片腕である最新型レプリカントのラヴ(シルヴィア・フークス)に依頼する。そこで浮かび上がったのが、30年前に忽然とレイチェルというレプリカントと姿を消したブレードランナーのリック・デッカード(ハリソン・フォード)の存在だった。緻密な捜査の末、Kは自分が記憶の底に封印した秘密と関連があると考えはじめる。Kは自らのアイデンティティを求めて突き動かされるように、全く消息不明のデッカードの行方を探し求め、遂にラスベガスにデッカードの居場所があるのではないかと確信し赴いていくのだが・・・。
「メッセージ」で哲学的な世界観の強いSFを演出したD・ヴィルヌーヴ監督のこの作品は、確かな作劇術とR・スコットと互角以上のヴィジュアルな画面構成によって観客を魅了する内容に仕上げたと言っていい!前作よりも50分近く長い内容となっているが、綿密な作劇術と相俟って、進化しつづける特殊撮影による刻々と変化するヴィジュアルな画面構成と、思考・感情という人間が人間たらしめる深い哲学的テーマが見事に合体した作品となっているのだ!それは、ラスベガスのシーンでの三次元ヴァーチャルによるE・ブレスリー、M・モンロー、F・シナトラの登場もテーマとは無縁でない事を示してくれるのだ!
ぼくのチケット代は、2500円出してもいい作品でした。
星印は、5ッさしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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