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祈りの幕が下りる時

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   2018/01/30

衛藤賢史のシネマ教室

福沢克雄監督のキメの細かい丁寧な演出で、刑事物とヒューマン・ドラマが見事に合体した作品となっていた!
 
東京の葛飾区のアパートで死後かなり経った女性の絞殺死体が発見された。捜査の結果被害者は滋賀県に在住する押谷道子と判明する。しかし、滋賀県の女性がなぜ東京で殺されたのか?日本橋署の加賀恭一郎(阿部寛)とイトコである警視庁の松宮(溝端淳平)の捜査の結果、道子が中学の同級生で演劇界で評判を呼ぶ演出家の浅居博美(松嶋菜々子)をたずねて東京へやってきたことが判明する。博美は以前、加賀のもとへ弟子の剣道の指導を依頼したことがあったのだ。だが博美にはアリバイがあり捜査は難航する。その頃、加賀を捨てて家出した加賀の母が東北で孤独の内に死んでいたことが報告された。母がなぜ自分と父(山崎勉)を捨てて家を出たのか、加賀にはそれがトラウマになっていた。さらに松宮がホームレスの焼死体が道子の殺人と何らかの関係があるのではと疑問を持つ。そして、母のアパートにあったカレンダーに書かれた東京の橋の字体と、道子が殺されていたアパートにもあったカレンダーの橋名の字体が一致していた不思議な謎。加賀は自分の過去にも、この殺人事件が何らかの関係があるのではと考えはじめる。その結果浮かぶ、接点のないはずの出来事を結ぶ、哀しい過去の出来事とは・・・。
 
殺人事件の発生からの、警視庁の事実を積み重ね改められる相関図の数々のピースの断片。そしてそれに従って掘り起こされる地道な捜査過程をキメの細かい演出で見せながら刑事物の持つスリリングな犯人像への追い込みを楽しませる前半から、後半それらを収斂させつつ事件の真相に迫る演出では一転して、加賀の母と犯人像の過去の胸痛む出来事を「砂の器」へのオマージュとも取れる哀切きわまりないタッチで丁寧に追う描写は出色の出来となっている。東野圭吾のこの加賀恭一郎シリーズでテーマとなる<愛する者を救うための嘘>を見事に視覚化した、福沢監督の手腕に敬服する。前作の「麒麟の翼」では若干不満を覚えたぼくだが、この作品はお勧めしたい内容となっているのだ!
ぼくのチケット代は、2300円出してもいい作品でした。
星印は、4ッ半さしあげます。

5点満点中4.5点 2300円

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