シャーリー・マクレーン、アマンダ・セイフランドの新旧ハリウッド女優の魅力を満載した作品。ハートフルな内容でありながら、両女優の毒舌合戦も楽しかった。
広告会社で財を成しながら、歯に衣きせぬ言動の過激さ故に80歳すぎの今、ひとり暮らしのハリエット・ローラー(シャーリー・マクレーン)は、ある知人女性の訃報記事に目にとめる。その女性の生前の高慢な言動を知っていたハリエットは、愛情豊かな貴婦人みたいに表現された訃報記事が忌ま忌ましい。そして、死んでからよりも生きている今、家族・知人が自分をどう思っているかに興味を持ち、その記事を書いた記者アン・シャーマン(アマンダ・セイフランド)を強引に指名し、自分の訃報記事を書くよう命じる。しぶしぶ引き受けたアンだったが、ハリエットが取材するよう命じた人たちの全部が悪口のオンパレード。頭をかかえるアン。ハリエットに正直に報告するが、彼女の人の上に君臨した女性らしい口調に反発し猛烈な毒舌合戦になってしまう。が、ハリエットは戦法の変更をアンに告げる。最高の訃報記事の条件である4つの事項を満たすため、生きている今それを実行するのでアンに同行取材するよう依頼する。そのひとつが不幸な生い立ちの子供の面倒を見る事。イライラするアンを同行させ救護院で問題児のブレンダ(アンジュエル・リー)を引き取るハリエット。甘やかすのではなくビシビシと乱暴な言葉づかいや態度など指摘するハリエットに、アンは少しずつハリエットのまっすぐでポジティブな生き方に好感を持つようになる。ハリエットとアンとブレンダの世代を超えた3人の女の奇妙な共同生活体験は、3人共々の心に、ある微妙な理解と愛情がおとずれた頃・・・。
まだ女性が男性の下につくのが当然と思われた時代を、男性に伍して社会の一線で戦ってきたハリエットの生き方への理解と、自らへの自信のなさに気づくアン。そして最下層の生活からひねてしまった黒人少女のブレンダのハリエットとアンへの感化。このトリオの生前訃報記事からはじまる世代・環境を超えた疑似家族構成に、それを取り巻くハリエットの元夫、アナログ・ラジオのDJ、広告会社の元部下の男性を配置した巧みな人物構成に加えて、生前訃報というアイデアによるオリジナルな脚本は新鮮な内容となった。またシャーリー・マクレーンの強くやさしい心根の演技と、受けの演技ながら一歩も引かないアマンダ・セイフランドのキュートな演技によって、この作品はだれが見ても心をワクワクさせてくれるお勧めの内容となっているのだ!
ぼくのチケット代は、2400円出してもいい作品となっていました。
星印は、4ッさしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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