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千と千尋の神隠し

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   2020/07/21

衛藤賢史のシネマ教室

ベルリン国際映画祭で最高劇映画に与えられる<金熊賞>を受賞したことは世界の映画界の人々を驚愕させた!と言うのは西欧ではアニメーションは子供の物という認識があり、劇映画の部門でノミネートされること自体有り得ぬ出来事だったし、その作品が最高賞を受賞するなど予想のできない事だったのだ。もちろん宮崎作品は西欧では評価されていたし、「もののけ姫」での人類の自然環境破壊という骨太のテーマは、もはやアニメーションは子供の物という世界観を覆す内容となっていたことは世界中の映画人から等しく認められていたにも関わらずノミネートすらされなかった。ぼくは、この1997年に発表された「もののけ姫」こそ最初の栄誉を受けるにふさわしい重厚なテーマを内在させた作品だったと!今でも思っている。
「千と千尋の神隠し」を見た時は、日本の自然崇拝神道の八百万神への理解に乏しい一神教信仰世界の西欧では受けないのではないかと危惧していたのだ。だからこの作品がベルリンで受賞したときは一瞬呆気にとられたのを覚えている。あれから20年、もはや映画館の大スクリーンでは鑑賞できないと覚悟していたこの作品をふたたび見ることが出来た(コロナ禍で窮地に陥った映画興行の窮余の一策だとしても)のは本当にうれしかった!大スクリーンで見られた感動と同時にあらためて宮崎作品はDVDなどでなく映画館でこそ見るべき作品なのだと強く感じながら、「千と千尋の神隠し」が20年経過しても古びない説得力を持った作品だったことを再認識させられたのだ。
10才の少女が異世界に迷い込み本当の名前を奪われながら、自分のアイデンティティを失わず自立心を育てていく過程を核にして、人類のエゴによる自然破壊で自然神(つまり八百万神)たちが己の役割を奪われ道をさ迷う姿を寓意的に描きながら「もののけ姫」にはないアニメーションならではのエンタティメント性をも出した内容に、最初に見たときよりも新鮮な気持ちになった自分がいたのだ。
人間と自然は共存できるのか?という重いテーマを豪速球で投げ込んだ「もののけ姫」に比較して幾種類もの変化球を織り混ぜながら決め球は直球という「千と千尋の神隠し」の手法のこの作品は、重いテーマを隠し味にしながらアニメーション本来のユーモアと真摯な態度の少女の心の成長譚をない混ぜにしつつ希望へと繋がる演出は余韻の残るラストとなっていたのだ!
ぼくのチケット代は、2900円出してもいい作品でした。
星印は、5ッさしあげます。

5点満点中5点 2900円

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