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もみの家

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   2020/05/26

衛藤賢史のシネマ教室

5月16日から、シネマ5が上映を再開しました!(その他のミニシアターも!)かなりきびしいルールで新型コロナ感染を防ぐ防護策をとっての再開です。「文明は人を緊張させるが、文化は人を安らかにする」と塩野七生さんはおっしゃっていますが、それを実感させる[安らぎ]を奪われた2カ月の日々でした!
この「もみの家」の<もみ>は漢字の<籾>をいいます。お米を守るもみ殻を現しているタイトルなのです。堅いもみ殻に身を包みながら、自分の心を外界から遮断して身を守ろうとする<引きこもり>の若者の農業を通して、籾の心を脱してお米になろうとする過程を描く作品です。新型コロナで日本中、いや世界中の人々が<籾>の心となっている時期に、ある意味タイムリーな作品かもしれません!

東京に住む16歳の彩花(南沙良)は、不登校になって半年が経っていた。心配した両親は富山県にある、心に不安を抱えた若者を受け入れる『もみの家』に彩花を託した。『もみの家』を主宰する泰利(緒形直人)と身重の妻(田中美里)は、穏やかな人柄で農家の一軒家で預かった5~6人の男女と共同生活をしていた。その生活は自給自営の農業であり、毎日野菜や稲を預かった若者たちや村の人々と農作業をする生活をしていた。都会生活で農作業など知らない彩花は戸惑いながら手伝うが、まるで慣れない環境と一緒に住む若者たちの交友関係になじめない。しかし、泰利夫婦の強制しない方針やリーダー格の青年(中村蒼)の明るい態度で、少しずつ共同生活に入りはじめた。そして、親切な村の老婆(佐々木すみ江)などとの交遊を通して少しずつ心を開いていく。泰利は、そんな彩花に村の祭りにする獅子舞に参加することを勧めた。ぎすぎすした生活ぶりなどまったく関係のない村のおたがいに助け合う暮らしに彩花は堅く閉ざした<籾>の心をしだいに溶かしていくのだが・・・。

一年間にわたる彩花の、泰利夫婦や若い男女の共同生活で<籾>の心から白い<お米>の精神に脱皮しようとする過程を描くこの作品は同時に人間の生・老・死によって紡がれる輪廻をも描いていくのだ。それは効率重視の近代文明と、人間の営み重視の手作りの農作業や村祭りなどの古い文化への対比に期せずしてなるたゆとうようなテーマをも内包する内容となるのだ!
ぼくのチケット代は、2300円出してもいい作品でした。
星印は、3ッ半さしあげます。

5点満点中3.5点 2300円

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