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若葉のころ

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   2020/05/19

衛藤賢史のシネマ教室

1982年と2013年の、台湾の母と娘の2つの世代にわたる、<17歳!>というまさしく[若葉のころ]のどんな時代状況であろうと消すことの出来ないキラキラと輝く青春時代のそれぞれの初恋を描いた珠玉のような作品なのです!台湾は1895年に日清戦争で日本に割譲されました。1945年に日本の敗戦で蒋介石の[中華民国]に返還されます。1949年に中国本土の毛沢東との覇権争いに敗れた蒋介石は台湾に移り[中華民国]政権を樹立し[外省人]として、もともと台湾に住んでいた人々を[内省人]と呼び支配する体制を作り戒厳令を敷き統括します。1988年に[内省人]である李登輝の登場で民主政治の体制が成り、現在までつづいているのです。つまり、この作品の母の青春は常に中国本土をにらむ戒厳令の敷かれたきびしい体制であり、娘の時代の民主制とは違う体制と理解して見ると母娘の初恋の様子の相違が分かるのです!

2013年の台北。バイ(ルゥルゥ・チェン)は、ピアノ教室をしている母ワン・レイ(アリッサ・チュア)と祖母との三人暮らしをしている活発な高校生。自分に気がある純情な同級生イエに、少しオマセな親友ウエンがバイの気持ちもお構いなしにちょっかいをかけるのを少し気にしていた。そんな時、母が交通事故で意識不明の重体に陥ってしまう。離婚した父が上海からかけつけたのを病室の前で祖母がはげしくののしる様や、ウエンが強引にイエに迫る様子を見てしまったバイの心は千々に乱れてしまう。悲しさと怒りの中、バイは母のパソコンからリンという自分の知らない人への未送信メールを衝動的に開いてみる。そのメールにはワン・レイの17歳の頃の初恋相手リンに宛てた切ない想いが綴られていたのだ。バイの心は遠い日のまだ厳しい時代の母の青春に想いが飛ぶ。しかし、そこにもその時代なりのキラキラ輝く青春が存在していたのだった・・・。

バイと母ワン・レイをルゥルゥ・チェンが二役を演じ、バイとワン・レイの時代環境が大きく異なる17歳の高校時代のそれぞれの青春の動揺感をビージーズの名曲[若葉のころ]をモチーフに描いたこの作品は、いついかなる時代であろうと瑞々しい若さの芽を奪うことはできないことを鮮やかに切り取った、誰しもが通る青春の輝きを移し出した内容となっているのだ!そうなんだ<青春時代のまん中は道に迷っているばかり>の世界だったから、ぼくらの悔恨と郷愁をいつまでも胸に残り火として持ちながら生きていくしかない生き物なのだ!
ぼくの星印は5ッさしあげたい作品でした。

5点満点中5点

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