インド映画の上映時間の長さは定評あるのですが、この作品も159分の長さです。大体120分前後の作品に慣れた映画ファンにとって、この長さには二の足を踏む方もおられると思いますが、是非にと!推薦したい作品なのです。たぶん見はじめたらアッという間に時間が過ぎ、しかもまだ見足りない気分にさせてくれる、笑いながら涙するハートフルな作品となっているのです!かく言うぼくも、少し長いかなと思いながら見はじめ、いつしか時間が経つのも忘れて見入ってしまいました。
パキスタンの小さな村に住む少女シャヒーダー(ハルシャーリ・マルホートラ)は、幼い頃から声が出ない子だ。心を痛めた母親は、願いが叶うと評判のインドにあるイスラム寺院に母子で願掛けに行くが、ある出来事でシャヒーダーは迷子になってしまう。そんなシャヒーダーと出会ったのが、ヒンドゥー教徒のハムマーン神の信者でバカ正直で超お人好しのパワン(サルマーン・カーン)だった。声が出せないシャヒーダーを哀れんだパワンは、一時的に預かり親探しをするが何せ声が出せないシャヒーダーとなかなか意思疎通が出来ず四苦八苦しながらの毎日となる。庶民のパワンの人柄に惚れた金持ちのお嬢さんラスイカー(カリーナ・カブール)も協力してくれる内、シャヒーダーが何とパキスタン人と分かる出来事に遭遇したふたりはびっくりしてしまう。インドとパキスタンは天敵同士の間柄。だが、国同士の争いなど超お人好しのパワンに通用しない。声の出せないシャヒーダーをパキスタンまで連れていき親を探す決心をしてしまう。インド人のパワンがパキスタンに行くと命の保証はないのだ。パワンの人柄を愛する恋人のラスイカーは、心配しながらパワンとシャヒーダーを送り出す。苦労しながらパワンは何とか国境を越えパキスタンに入り、シャヒーダーの親を探す困難な旅がはじまった。手掛かりはシャヒーダーがインドで反応した絵葉書の写真だけと雲を掴むような頼りないものだった。さあ、パワンは首尾よくシャヒーダーの住む土地までたどり着けるのか・・・。
インドでのシャヒーダーとの珍妙な生活の笑いころげるエピソードから、パキスタンでの困難な親探しの旅の珍道中ぶりでもたっぷり笑わせてくれながら、国家とは何ぞやとか、宗教観の違いの争いなどの重いテーマをしっかりとした視点で描写しながら、根柢の個の人々の人間愛の崇高性などが、ぎっしりと内容に詰まったすばらしい娯楽作品なのです!最後は涙がとまらないのでハンケチを用意した方がいいでしょう!
星印は、文句なく5ッさしあげたい作品でした。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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