10代で病に冒されなくなった少女が淡い想いをよせた少年と、その少女の親友との30年にわたる愛の軌跡を、ふたりにとって忘れられぬ<三月>弥生の季節だけに絞って描写していく!という思い切った手法のラブストーリー作品である。
1986年、高校3年生の結城弥生(波留)は親友のサクラ(杉咲花)を喪った。サクラは輸血でエイズに感染し、心ない生徒たちからいわれない中傷に晒される。偏見のないまっすぐな性格の弥生は、そんなサクラを中傷する子たちを激しく批判しかばいつづける。そんなサクラが淡い想いを持つサッカー部のエース山田太郎ことサンタ(成田凌)との仲を取りくもうとする弥生だが実は自分もサンタが好きだった。
そして三月卒業式、そこにはサクラの遺影を持つ両親の姿があった。両親の願いでサクラが大好きだった<上を向いて歩こう>の曲が流れた式の帰り道、サンタは弥生に「30年しても結婚してなかったらオレが弥生をもらってやるよ」と言いながら別れる。サクラへの思いやりがふたりにあり、おたがいに魅かれあいながら告白できないジレンマのままのサンタの切ない別れの言葉であったのだ。サンタは新しく創設されるJリーグのプロサッカー選手を目指し、弥生は教育者になるため大学に進学と別々の道に進んだ。
歳月は流れ、天衣無縫のサンタはデキちゃった婚をしたものの事故で足をわるくしサッカー選手を諦めることになる。弥生は家の破産という最悪の出来事で戦略結婚を強いられる不幸に合うがサンタの助言で家を離れ教員の道に進む中、やさしい歯科医(小澤征悦)と結婚する。そして2011年、東日本大震災の前日、弥生は離婚し荒れた生活をしていたサンタを訪ね息子(岡田健史)の仲を取りもち一夜を共にすることになるが・・・。
30年のふたりの軌跡を、<三月><上を向いて歩こう><バス><ヘレン・ケラー「奇跡の人」>を鍵としてリンクさせながら、序盤と終盤にイジメの問、そして東日本大震災を絡めてくる構成に監督の思いを詰まらせたこの作品は、その意欲は分かるが少し詰め込みすぎた感がある。そのため、30年の長い月日のふたりの離れ難い想いを持続させるための手法として、偶然的要素の連続で綴る流れを入れ過ぎているのだ。さらに高校時代の風貌が主役ふたりとも30年という月日の流れに変わらないな!と気になる人も多いと思う。30年を<三月>だけに絞る作風や、タイトル「弥生、三月」もすばらしいと思う作品だけに残念であるのだ!
ぼくのチケット代は、1900円出したい作品でした。
星印は、2ッ半ぐらいかなと思う作品でした。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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