2011年の東日本大震災!10mを超える津波によって福島第一原発は炉心溶解の危機に直面した。現場に残り最後まで発電所を守る懸命の努力をした吉田所長たち50名の職員たちを、海外メディアは<Fukushima50>と呼称し称えた。この作品は、その姿を当時の状況と合わせてドキュメント風に描いた劇映画である。
2011年3月11日。マグニチュード9.0震度7という千年に一度と言われた巨大地震が東日本を襲った!東日本では唯一津波がなかった福島県にも巨大津波が発生し、福島第一原子力発電所にも10mを超える想定外の津波が押し寄せ、浸水により地下に設置された全電線が機能しなくなる事態が発生した。発電所の全指揮を執る吉田所長(渡辺謙)は、全職員を鼓舞しながら原発を守るため、あらゆる手段を講じていくも、電源がなければ原子炉の制御は不可能と判断し苦慮する。このままではメルトダウン[炉心溶解]という最悪の結果を生むのだ!発電所の1・2号機の現場責任者・伊崎(佐藤浩市)ら現場職員が現場に残り原子炉の制御に奔走するも、炉心を冷やす大量の水の供給は電気がなければ機能しない。一刻の猶予もない状況下、道路が寸断され消防車の到着も期待できない。残る手段は、原子炉格納容器の圧力を下げるため手動で弁を開き容器内の気体の一部を放出する[ベント]という作業しかない。しかしその作業は建屋内に充満する人体が耐えられない高濃度の放射能を防護服を着ていても浴びる可能性があった。吉田所長は苦渋の決断をし、伊崎に頼む。余震が続く中、伊崎は自分が行く覚悟をするも職員たちは自分たちが行くと挙手していく。この方法は世界では実施例がないのだ。そんな危機的状態の中、状況を把握しきれない東京本社や官邸からの指示に怒る吉田。伊崎の指揮の下に、ベントの手動に命を懸けて地下に入る職員たち。人類が未だに体験した事のない危険な作業がはじまっていく!愛する故郷を日本を壊滅させないため、現場のプロの意地と誇りを懸けた戦いが・・・。
原発建屋内に残り長時間寝食を忘れ、現場内の叡智を懸けて奔走する職員や現場で協力する自衛隊の人々を中心に描きながら、本社筋や官邸の様子さらに避難した福島の人々の姿を描く、このドキュメント風劇映画には傑出したヒーローはいない作品なのだ。それぞれの立場で日本の危機を回避するため動く動的な群像劇となっているのだ!
ぼくのチケット代は、2300円出してもいい作品でした。
星印は、4ッさしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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