超過激な[バイオレンス]と清純な[初恋]を合体させるという、三池監督らしいブッ飛んだクライムな内容の作品である。しかし、その匙加減が程よく調和して最後まで飽かないエンタティメントな作品に仕上げて来た三池監督のセンスに感心してしまうのだ!
赤ん坊のときにゴミ捨て場所に捨てられた天涯孤独のレオ(窪田正孝)は、青年となり類まれな才能を持つボクサーとなっていた。しかし、試合で一瞬意識を失いKO負けとなり病院で診察を受けた結果、脳腫瘍で余命がわずかと診断される。自暴自棄となったレオは東京の盛り場をさ迷う途中、悪徳刑事(大森南朋)から追われる少女モニカ(小西桜子)に助けを求められ、反射的に刑事を一発でKOしモニカを連れて逃げる羽目になる。モニカは性格破綻者の父にデリヘル嬢に売られ、ヤクザ組織にクスリ漬けされている哀れな身だった。そして異常な性格の若手ヤクザ(染谷将太)と刑事が組んで組織の麻薬を巻き上げる計画の人身御供にされ逃げる途中だったのだ。モニカはヤク漬けで父から迫られる幻覚症状があり、この時もその幻覚で発作的に父から逃れようとしたのだ。しかし、偶然出会い逃げ出したレオとモニカの逃走劇が話しをややこしくしてしまう。モニカが麻薬を持って逃げたと思われ、刑事や異常ヤクザにヤクザ組織さらに中国マフィアまで参入して、血眼でふたりを狙いながらの麻薬争奪戦がはじまってしまう。レオとモニカは逃走しながら、悲惨な境遇同士の身の上を知りおたがい淡い慕情を覚えはじめるのだが・・・。
死を宣告された若きボクサーと、父から売られデリヘル嬢に堕ちた少女との偶然の出会いと逃走を通しての初恋の芽ばえを物語の核としながら、過激なバイオレンスに満ちた悪の組織のややこしい戦いを描いていくこの作品は、奇妙なユーモアを伴いながら思わず吹き出すシーンを満載して進んでいくのだ。そんなシーンに合わせる音楽も愉快であり、全体がシュールに構成された内容もバイオレンスな描写を和らげてくれる効果を持つのだ!特異な内容であるのですべての人が楽しむまではいかないと思うが、三池監督の手腕は確かな評価をしていい作品となっているのだ。それは、伏線描写がすべて見事な効果をあげていることからも分かるのだ!また脇のベッキーの怪演と染谷将太の悪役ぶりにも注目してしまうだろう。
ぼくのチケット代は、2300円出してもいい作品でした。
星印は、4ッさしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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