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アルキメデスの大戦

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   2019/07/30

衛藤賢史のシネマ教室

この夏、邦画の目玉作品のひとつである「天気の子」は、高い水準の出来となっていたが、同じく目玉作品であるこの作品もクオリティの高い内容となっており、日本映画ファンにとって何よりもうれしい思いがする2週つづけての出来事となった!この2作品は、アニメーションと原作が人気マンガという、日本が世界に誇る視覚文化でありこのジャンルの創造性の高さを共に証明したような内容となっていたのだ。

1933年(昭8)、台頭する日本は欧米列強との対立を深め軍備の拡張を急いでいた。四界を海に囲まれた日本は、海軍省で密かに世界最大の戦艦を建造する計画を練っていた。海軍少将・山本五十六(舘ひろし)は、海軍中将・永野修身(國村隼)らと、これからの戦いは軍艦でなく飛行機が戦いの帰趨を決めると、航空母艦と戦闘機の増産こそ正しいと進言していたが、軍艦こそ海軍の宝であると主張する海軍少将・嶋田繁汰郎(橋爪功)らは、最強の戦艦建造計画をしゃにむに急いでいる。そんな中、山本少将が提案する航空母艦よりの巨大戦艦の建造費の価格が低いことに疑問をもつも、戦艦に関する建造費や設計図は軍事機密として海軍省が秘匿し、その詳細が分からない。そんな山本少将の目に留まったのが、数理に明るい東京帝大で百年に一人の天才と言われた数学者・櫂直(菅田将暉)だった。ある事情から日本に絶望しアメリカの大学に留学することを決めた直は、大の軍隊嫌いの上数学だけを偏愛する変り者であり山本の誘いを頑なに拒むが「巨大戦艦の力を過信した者は戦争をはじめ、そして負ける」という山本の言葉で、直は巨大戦艦の建造費の秘密を暴くため、山本が直の部下としてつけた田中少尉(柄本佑)と共に海軍省に主計将校として乗り込み、あらゆる数式を駆使して巨大戦艦[大和]の建造のからくりを暴く活動をはじめる。天才数学者VS海軍のすさまじい頭脳戦の闘いの幕が切って落とされたが・・・。

歴史の事実にフィクションを混ぜた、この異色のドラマは1945年(昭20)鹿児島沖で117機のアメリカ戦闘機の攻撃で撃沈されていく戦艦[大和]の最後を巻頭シーンで描き、そこから1933年へと戻り[大和]建造の内幕を一気に描く内容となる。天才数学者のたった一人(しだいに共鳴する田中少尉も加わるが)での、巨大国家組織との知力のすべてを掛けた頭脳戦は、ある意味地味だが山崎監督の類いまれな演出により、下手なアクション満載の作品よりスリリングな展開に手に汗にぎらせる内容となっており、お勧めしたい一級の品格をもつエンタテイメントな作品となっていたのだ!
ぼくのチケット代は、2400円出してもいい作品でした。
星印は、4ッ半さしあげます。

5点満点中4.5点 2400円

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