フランスで女性としてはじめて国葬された作家シドニー=ガブリエル・コレット(1873~1954)の半生を描いた作品。
フランスの田舎に住むコレット(キーラ・ナイトレイ)は、父の縁で知り合った14歳年上の人気作家ウィリー(ドミニク・ウェスト)と結婚してパリに移り住む。時代は、古き良き時代<ベル・エポック>の文化・芸術の中心地のパリで、各種の有名人たちの享楽的なサロンに人々が集っていた。人気者のウィリーは、芸術家たちの集うサロンにコレットを連れて気炎をあげる毎日を過ごしている。結婚前から数多くの女性と浮名を流す男としても有名だったウィリーはコレットと一緒になってからもその性癖は収まらない。男性優位の社会制度であるこの時代、コレットは不愉快でもあるのだが、外での浪費で家計は火の車状態。しかし、天才的なプロデューサー才能があり目利きでもあるウィリーは、コレットの作家としての才能を見抜いていた。コレットの学生時代の思い出話からヒントを得たウィリーは、その話しをコレットに執筆するように言う。「クロディーヌ」の誕生だった!しかし、作者名はウィリー。女性作家など編集者は歯牙にもかけないという理由で、人気作家のウィリー作として本になったこの作品は、爆発的な売れ行きをする。しぶるコレットに「クロディーヌ」シリーズを執筆させ、ウィリーはその栄誉をひとりでもらう。だが、コレットは、自分が執筆したことを言えず、ウィリーの収まらない浮気に心の懊悩を抱えはじめ夫婦関係が険悪な状態となっていく。やがてコレットは、貴族の家系に生まれながら男性の格好でサロンを闊歩する女性ミッシー(デニーズ・ゴフ)<当時、女性がズボンを着用することは処罰に値する罪とされていた>と親密になり、自分も世間の弾劾を恐れず女性作家としての名乗りをあげ、自分自身の心に正直に生きていく決心を固めるのだったが・・・。
女性の権利が稀薄な時代、男女関係なく個人の才能を優先する生き方を率先して先導した天才作家コレットの半生を描くこの作品は、悶え苦しみながらその生き方を貫く覚悟をするまでの半生を、キーラ・ナイトレイが火の玉のように激しい演技で熱演する作品となっていた。ベル・エポック当時のパリのサロンの雰囲気を濃厚に再現しながら、ひとりの女性の己に忠実に生きていこうとする生き様を見事に表現した作品となってたのだ。
ぼくのチケット代は、2100円出してもいい作品でした。
星印は、3ッ半さしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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