ティム・バートン独特の過剰な遊び心が適度に抑えられた、誰が見ても楽しい気分にさせられる上質な娯楽作品となっていたのだ!
1919年。一次大戦から帰還した、メディチ・サーカス団の看板スターのホルト(コリン・ファレル)は片腕を戦争で無くしていた。戦争中、母を亡くし父ホルトの帰還を待ち続ける娘ミリー(ニコ・パーカー)と息子ジョーは、父の変わり果てた姿に唖然とする。そんなホルトに団長のメディチ(ダニー・デビート)は、象の世話係を頼む。ロディオの名手だったホルトだが、馬をあきらめミリーとジョーとジャンボという雌象の世話をはじめた。そのジャンボが子供を産んだ。何とでっかい耳をした小象ではないか!ダンボと名付けられた小象は、その姿から観客の笑い者になってしまう。そんなダンボを調教係の男が邪険に扱う態度に母象ジャンボが暴れてしまい、経営難で頭を抱えた団長はジャンボを売ってしまう。だが、献身的に世話をするミリーとジョーの前で何とダンボはその大きな耳を使って飛び上がったのだ。ショーでダンボの飛ぶ姿を見た観客は大喜び!一躍スターとなったダンボを、やり手興行師ヴァンデバー(マイケル・キートン)は、空中ブランコのスター・コレット(エバ・グリーン)と組ませ大儲けしようと姦計を持ち、団長を騙しサーカス団を自分の配下にしてしまう。メディチ・サーカス団とけた違いの規模のヴァンデバーのサーカスは、ど派手な演出とものすごい設備で、ダンボとコレットを主役にしたショーを計画する。しかし、その演出はダンボやコレットの命の危険を無視したものだった。そんな扱いに腹を立てたホルトとミリー、ジョーの親子とメディチ・サーカス団の団員は、ダンボとコレットを救うため立ち上がり、ダンボの大冒険がはじまるが・・・。
今回、ティム・バートンはストーリー上の道草をせずに、ダンボとホルト親子の愛情を中心にストーリーを組み立て、そこから逸脱することはない!その代わり、サーカスのショーのシーンでは存分にサイケな描写とめくるめくような色彩をふんだんに使用し、バートン独特の演出を見せてくれるのだ!またダンボの表情や目の動きなど、思わず抱きしめてやりたいキュートさがあり、その愛らしさには、おそらく老若男女問わず魅了されるのではなかろうか!大筋以外は、アニメ「ダンボ」(1941)を大胆に脚色した構成となったが、実写版としての内容として、名作アニメの名誉を汚さない楽しい作品になったと思う!
ぼくのチケット代は、2400円出してもいい作品でした。
星印は、4ッさしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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