1960年代、ソ連とアメリカのはげしい宇宙進出計画がはじまった時代。
一歩遅れを取ったアメリカが目指したのは月面到着のアポロ計画だった。そして苦難の技術の末、アポロ11号に乗ったニール・アームストロング船長が人類はじめての月面に足を下ろした。
この映画は、そのアームストロング船長の視点に焦点を当て、月面到着までに至る家族の葛藤など生々しい人間模様を織り込みながら、命の危険を懸けて苦闘する宇宙飛行士たちの姿を描いていく内容となっている。
1960年代、ソ連がはじめて宇宙に進出する。遅れを取ったアメリカは巻き返しを図る。アメリカの威信を懸けたアポロ計画だったが、なかなか技術がはかどらず飛行士たちの犠牲も増える中、ニール・アームストロング(ライアン・ゴズリング)は飛行士に任命された。幼い娘を白血病で失ったばかりであり、ニールも妻ジャネット(クレア・フォイ)も精神的にどん底の時期であった。しかし、ニールは黙々ときびしい訓練に励む。飛行士仲間たちもそんなニールに気づかうが、その間にも仲間の犠牲もあり、ジャネットの精神も不安のあまりギクシャクとしてくる。そんな状況の中、ニールはアポロ11号の船長に任命された。前人未到の月面に到着する困難極まるアメリカの威信を懸けた任務にもニールは動じない。だが出発前の日にジャネットの心ははげしく揺れ、激情的言葉を吐いてしまう。全世界が注目するアポロ11号計画の3人のクルーを乗せた宇宙ロケットの月面への困難な飛行がはじまった・・・。
壮大な計画に従事する宇宙飛行士たちの姿をヒーロー的に描くドラマを捨て、チャゼル監督はその家族の悩み・葛藤に焦点を当て、素っけないほど淡々とそこに至る過程を描いていく手法をとる内容に終始した作品となっている。なので過剰な劇的スケールの内容を期待した観客にとっては肩透かしを食らう羽目になるかもしれないので注意が必要だと思う。結果的には世界的ヒーローとなったひとりの男と、宇宙飛行士という職業をもった夫をもつ普通の家族の精神の軌跡を描いた、いわば心理劇と思って見てくれると納得できる内容となっているのだ!
ぼくのチケット代は、2000円出してもいい作品でした。
星印は3ッ半さしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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