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ビブリア古書堂の事件手帖

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   2018/11/06

衛藤賢史のシネマ教室

古書に精通した女性と、ある事から本を読むのが苦手になった青年との真逆の組み合わせのコンビが、数々の著名な文学小説に絡む謎を推理するという、斬新な試みで人気を博した三上延のベストセラーの映画化作品。文学好きには、原作者の著名作家への博識が織り込まれ、また古書業界のあり方への新鮮な知識も知ることになり、たまらない内容になっている小説として人気があったが、映像化するには少し地味かなと思っていたので、どんな内容になったか?期待して見た。

北鎌倉で大衆食堂を営む祖母・絹子の逝去で、孫の五浦大輔(野村周平)は本を整理していた時、夏目漱石の「それから」に不審な書き込みを見つける。大輔はその古書を祖母が購入した、ビブリア古書堂で鑑定してもらうため訪れた。若い店主の篠川栞子(黒木華)は、本に関しては能弁なのに、人と折衝するのは失語症と思うほどオズオズした対応する不思議な女性だった。大学を出たものの、まだ無職の大輔は成り行きでビブリア古書堂にバイトすることになった。栞子の並外れた古書の知識で「それから」に書き込まれた、若き日の絹子(夏帆)と田中嘉雄(東出昌大)との濃密な恋物語が判明してくる。その推理と並行するかのように栞子の上に不可思議な出来事が起こった。栞子が所有する太宰治の「晩年」の希少本を巡り、大庭葉蔵を名乗る謎の人物が、その本を求め執拗に栞子をつけ狙ってきたのだ。栞子に淡い恋心を抱くようになった大輔は彼女を守るため奮闘することになった。しかし業者が集う古書市で稲垣(成田凌)という魅力的男性が栞子に接近してきた。強力なライバルの出現にやきもきする大輔。ある日、ビブリア古書堂が放火されるショッキングな事件が起こった。それを境にして次第に判明してくるこの謎の出来事に栞子と大輔は立ち向かうのだが・・・。

本大好きな若い女性と、本を読むのが苦手な青年の真逆な男女の不思議な出会いから、太宰治の「晩年」の希少本が絡む事件の追求を縦糸にし、夏目漱石の「それから」に書き込まれた顛末としての昭和30年代の青年の祖母の切ない恋物語を横糸にしたこの作品は、ほぼイーブンの形で物語を進行させる形式をとっている。ビブリア古書堂での事件だけでは地味と判断したのであろうか?現代と過去を並行させた様式はどちらを主力にするか少し迷ったような内容にしてしまった。そのため、主力のはずの栞子と大輔の描き方が淡泊になったのは否めない!と思う。この小説の愛読者は、このふたりの物語とそれに絡む古書の蘊蓄を期待したのだから。
ぼくのチケット代は、2000円出してもいい作品でした。
星印は、3ッさしあげます。

5点満点中3点 2000円

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