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散り椿

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   2018/10/09

衛藤賢史のシネマ教室

一時期から日本映画の主要ジャンルとして消えつつあった<時代劇>に、復活の兆しが見えてきました。「るろうに剣心」や「超高速参勤交代」などの大ヒット作品がその背中を押したのが大きな要因と思いますが、映画ファンにとってうれしい出来事です。そしてこの作品も、それをさらにひと押ししようとする本格的時代劇なのです。

8代将軍・吉宗治世下の享保15年。扇野藩で剣の四天王の筆頭とうたわれた瓜生新兵衛(岡田准一)は、藩内にはびこる不正を訴えるも認められず、妻・篠(麻生久美子)を連れ出奔し京都で浪人暮らしをしていたが、病に倒れた篠から最後の願いとして「采女さまを助けてあげてください」と言われ愕然とする。榊原采女(西島秀俊)は、四天王のひとりであり、新兵衛の幼い頃からの親友でもあった藩の上流階級の息子であった。采女はかっての篠の想い人であったが、身分の違いから新兵衛に嫁したという曰くがあり、さらに新兵衛が不正の糾弾をした一門の跡取りでもあるという因縁の持ち主だった。新兵衛はふたたび帰ることはないと決めた扇野に戻る決心をする。なぜ篠が「采女さまを助けて・・・」と夫である新兵衛に言ったのか?そして「今いちど故郷の<散り椿>を見たい」と最後の最後につぶやいた言葉を果たすために篠の位牌を懐に納めて。故郷で身を寄せる場所は篠の実家である坂下家だけだった。そこでは篠の妹・里美(黒木華)と弟・藤吾(池松壮亮)がひっそりと身を寄せあって暮らしていた。藤吾は坂下家にも迷惑をかけた新兵衛を恨んでいたが、里美はやさしく迎える。その頃、扇野藩は新しい城主を迎える準備に追われていた。采女は新城主と図り藩の治世一新に邁進していたが、藩の権力者の城代家老・石田玄蕃(奥田瑛二)と対立していた。そこに帰ってきた新兵衛もその対立に巻き込まれていく。果たして采女は藩を牛耳る悪人なのか?新兵衛は悩みながらも采女の真意を探るうち・・・。

はっきり言って、この作品はドラマの流れに重きを置いていない。撮影を兼ねる木村監督の目を見張るような雪・雨・風景描写を堪能する作品といっていいと思う。そしてしの背景描写の中での凛とした武士たちの姿や、たおやかな女性たちの姿を流麗に描いていくことに終始した様式美あふれる作品なのだ。ぼくはそれを否定しない!こんな所作のきれいな作品もあってもいいと思う。これもまた時代劇の魅力だと考える。そしてそれを引き出した岡田准一の凛とした風貌や、黒木華のつつましい挙動の中での淡い慕情の風情などが見おえた後、脳裏に残る作品でもあるのだ。
ぼくのチケット代は、2200円出してもいい作品でした。
星印は、3ッ半さしあげます。

5点満点中3.5点 2200円

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