このタイトルだけではどんな内容の映画であるか判断できないと思うが、将棋のプロを目指した若者の話しなのだ。愛称<しょったん>こと棋士・瀬川晶司五段のプロになるまでの数奇な流れを描いたもので、監督は元将棋の奨励会に入りプロ棋士を目指したことのある豊田利晃がメガホンを取った作品である。
心やさしくおとなしい<しょったん>こと瀬川晶司(松田龍平)は、小学校時代に担任の香島澤佳子先生(松たか子)から激励され、プロ棋士を目指す決心をする。同級生でやはり将棋が強い鈴木悠野(野田洋治郎)と腕を競い合い、将棋道場の工藤一男(イッセー尾形)はふたりの腕を認め、プロ養成の奨励会を受験するよう勧める。しかし悠野はプロ志望せずに進学することを晶司に告げる。晶司は良き理解者である父(國村隼)と母(美保純)の後押しでプロになる事を決心し、プロへの登竜門である奨励会に入門する。しかしその世界は過酷なものであった!プロ棋士に認定される四段になるために、同じような力量のある奨励会員と試合を重ね26才までに三段から四段に合格しなければ退会しなければならない制度だったのだ。晶司の目の前で、友人・ライバルたちが退会を宣告され次々と去っていく。そして、晶司も気がつけば26才。晶司はプレッシャーに耐えきれず悪手を打ち、四段認定はならず、退会させられることになった。
大学に入学した晶司は卒業後、サラリーマンとなる。そして社会人としてアマチュア将棋の雄とし活躍する悠野と将棋を指して楽しむ内に、アマチュア選手権で優勝しプロと対戦する機会に恵まれた晶司は、その勝率が優秀で世間の評判となった。晶司の心やさしい性格に惚れたアマチュア強豪の藤田(小林薫)などの応援で、プロ棋士会は、2006年に奨励会からの昇格の他にプロ編入試験を設けた。晶司が35才の時であった。晶司は挑戦する!6人のプロと対戦し3勝が必要な過酷な戦いに・・・。
今、藤井少年の活躍で将棋フィーバーが炸裂しているが、この作品を見るといかに藤井少年が傑出した才能を有しているのか!そしていかに将棋界のプロになるのが苛烈な狭き門なのかがよく分かる作品となっている。ただ豊田監督が将棋をよく分かった方なので、<しょったん>のプロ入りまでの道程を知りすぎた故の淡々とした描写なのでドラマとしての盛り上がりが足りないという欠点はある。なので将棋界組織を知らない映画ファンにとって少し不満が残る作品でもある。
ぼくのチケット代は、2000円出してもいい作品でした。
星印は、3ッさしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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