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思い出のマーニー

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   2014/07/22

衛藤賢史のシネマ教室

1967年に発表されたイギリスの児童文学「思い出のマーニー」を原作としたこの作品は、舞台を日本の北海道に置き換えて、12歳の少女・杏奈が負った心の傷が、謎の少女・マーニーとの出会いによって次第に昇華されていく過程を、原作をあまり改変せずに幻想的かつリリシズムあふれる描写で追っていく内容となっている。
幼い頃に両親を亡くした12歳のアンナは、養父母と札幌で暮らしている。
平穏な暮らしをしていたのだが、あることをきっかけに杏奈は心を閉ざしてしまう。
思い余った養母・頼子は、親戚である北海道の海辺の村に住む大岩夫婦に頼み、喘息の療養を兼ねて杏奈をひと夏の間預かってもらうことにした。
おおらかな大岩夫婦は、心を閉ざし、他人との付き合いに不安定な杏奈の態度を気にすることなくやさしく接してくれるが、杏奈はなかなか他人行儀な態度を崩さない。
杏奈は村の少女が無配慮に心の襞に飛び込んでくる言動に反発し、無礼な態度をとり、村の人々から孤立する。「私は私のとおり、不機嫌で、不愉快で、私は私が嫌い…」心の苦しみと悲しみの中で、村に来る前に途中でみかけた湿地の入り江の奥に建つ古い洋館の見える海岸で泣き崩れる杏奈の前に金髪の少女・マーニーが現れる。奇妙なことにマーニーは、杏奈の心を理解し、妖精のようにはかなげで美しいマーニーに杏奈の心は開いていくようになる。「あたしたちのことは秘密よ、永久に」というマーニーは杏奈にとって自分の心を打ち明けられる唯一の存在となり、毎日のようにマーニーの屋敷や湿地の海辺で逢瀬を重ねるようになる。そして杏奈もまたマーニーの心の中にある深い悲しみを知っていく。
マーニーとは一体誰なのか?湿地の洋館に秘められた悲しい出来事とは?杏奈がマーニーに導かれるようにわかった真実とは…?
か細く繊細な思春期前期の少女の心を薄い絹の幕を通して見つめるかのようにはかるこの作品は、まるで揺らぐ蜃気楼を追いかけるような幻想的雰囲気を醸し出す内容となっている。大岩夫婦のようにがっしりと大地に根を下ろして現実世界をありのままに生きる登場人物をくっきり描くことによって、杏奈とマーニーの心にバリアーを張った同士の深い精神の絆が、精神的愛の飢えからの救いを求める思春期の少女の気持ちの切ない心を、対比的に見る者の心情に訴えかけてくる物語となっているのだ。
ぼくのチケット代は、2,200円を出してもいい作品となっています。
星印は4つ差し上げたい作品でした。

5点満点中4点 2200円

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