「まだ機能していない部分の人間の脳が覚醒したらどうなるだろう?」というアイデアで作られたこの作品は、89分というタイトな長さにして無駄な描写を捨て、超スピーディな展開で観客を画面の中に引っ張り込むSFアクションとなっている。
台湾で留学生活を送っているルーシーは、軽い遊び友達の男性からホテルに荷物を持っていくように頼まれる。嫌な予感がしてしぶったものの強引に頼まれフロントに届けたルーシーは、韓国マフィアの部屋に連れ込まれ中身の新種の麻薬を腹の中に詰められ運び人にされてしまう。しかし、アクシデントで腹を蹴られ、麻薬がルーシーの体内に流れ出してしまう。それはルーシーの脳を覚醒させ人智を超えた能力を生み出す。通常の10%しか機能していないという人間の脳が凄い勢いでパーセンテージを上昇したルーシーにはもはや誰もかなわない。しかし、コントロールできない強大なパワーに、ルーシーは脳科学の権威ノーマン博士にコンタクトを取って助力を求めパリへと行く。
己の仮説を具現した存在と化したルーシーを診たノーマン博士だが、短時間に急速に脳の進化が始まったルーシーに危惧する。ノーマン博士も50%を超えていこうとする脳の進化の先がどのような状態になるか見えないのだ。
その頃、執拗にルーシーを追う韓国マフィアのボスのチャンたちもパリへと乗り込んでくる。軍隊並みの戦力を持つ韓国マフィアは、一切の斟酌なしに手向かう警官たちを倒しながらルーシーへと迫ってくる。そして、100%の脳の覚醒へと迫るルーシーの人類未見のルーシーの精神、肉体はどうなっていくのか…。
猿人から人類への何百万年と続く進化の流れを手際よく画面の中に織り込みながら、脳の進化過程を見せつつ、ルーシーの脳の覚醒を20、30、50%と上昇するごとに見せる精神、体力の超人的威力を超絶的アクションで描写する手腕は、久々にL・ベッソンの華麗な演出術を堪能させてもらえる作品となっている。S・ヨハンソンの魅力を満載した内容であり、脳科学とアクションと言うややもすれば大破綻を起こしかねないふたつの要素を、エンタテインメントな作品に融合した快作となっている。ただ、なにしろ人間が未見の100%脳の覚醒というラストは、さすがのL・ベッソンもてこずったかな!という印象であった。
ぼくのチケット代金は、2,200円出してもいいと思う作品でした。
星印は3つ半差し上げます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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