ユニークな視点での[家族写真]で人気のある写真家・浅田政志。その父・母・兄・政志の仲良し4人家族の、ちょっぴしヘンテコながらほのぼのとした絆でまとまる生活の中で、写真家として成長する政志の活動を描いた作品です。
三重県で暮らす浅田家は、専業主夫の父(平田満)、看護師として生活を支える母(風吹ジュン)、ちょっぴし型破りな弟をやさしく見守る兄・幸宏(妻夫木聡)、そして父の写真好きの血を受けた政志(二宮和也)の4人暮らし。忙しく働く母に代わって、父が主夫として毎日の料理を担当し子育てを担当している。写真好きの父は、毎年年賀状に幸宏・政志の変わったポーズの写真を撮っていた。兄弟は辟易しながら父の写真撮りに協力する内に、政志は写真を撮るのに興味を持ち写真家になりたいと大阪の写真専門学校に進学した。が、学校を欠席しがちな政志は校長から卒業制作での作品の成否で卒業を考慮すると宣告されて、[浅田家]というタイトルでの珍妙なコスプレ写真で最優秀賞を獲得する。卒業後、自分のスタイルが確立できず3年間ブラブラする政志に、父・母・兄は心配しながらやさしく見守る。ある日、父との会話で父の夢は消防士だったと聞いた政志は、地元に就職した幸宏に頼み消防士の友人から制服を借り受けさせ、家族全員での消防士制服ポートレートを撮る。そして母にも幸宏にも夢を聞き[浅田家]シリーズを作成して、東京で写真家の助手をしながらある出版社から、[浅田家]というタイトル写真集を発売する。このユニークな写真集が、何と!写真界の芥川賞と謳われる<木村伊兵衛賞>を獲得したのだ。以来、日本中の家族から撮影依頼を受け、プロとしてようやく軌道に乗りはじめた時、東日本大震災が発生したのだ。実はプロとして最初の依頼者は岩手県の家族だったのだ。駆けつけた政志の目に入ったのは元の姿もない瓦礫の山だった。そして、そこで見たのは津波で泥だらけになった写真を洗浄するボランティア活動をする人々だった。政志は参加する!一瞬にして奪われた家族の生前の姿を写真で見つけ、うれしそうに持ち帰る人々を見て<写真のもつ>大きな力を感じる政志。そんな政志の前に、ひとりの少女が現れる…。
奇をてらわず、浅田家のほのぼのとした家族愛を基調として描いたこの作品は、そんな愛ある家庭に育まれた政志の心の成長を淡々と描写することによって、<家族写真>をテーマとする政志の気持ちが素直に伝わり、それがそのまま大震災での[写真洗浄]という流れに無理なく入っていく!きちっとしたまとまりのある内容となった佳作でした!
ぼくのチケット代は、2400円出してもいい作品でした。
星印は、4ッさしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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