「座頭市」シリーズの勝新太郎の殺陣にしびれている時代劇大好き少女が、秋の文化祭に自分の撮った時代劇を上演しようと、夏休みに仲間たちと組んで映画撮影に取り組むという内容に、SFが絡むというポップな青春映画となっています。
高校3年のハダシ(伊藤万理華)は、今日も映画部の片隅でションボリとくすぶっていた。映画部の撮る作品は、<胸キュン青春物>中心なので、ハダシが絶体撮りたい時代劇など誰も歯牙にもかけてくれないのだ。今日も映画部室をエスケープしたハダシは、秘密の隠れ家で親友の天文部の天才少女と女子剣道部エース少女の3人組でひとしきり時代劇の魅力を語り合って鬱憤をはらしている。そんなある日、ハダシの前に理想とする武士役にピッタリの凜太郎(金子大地)が現れた。なぜか、渋り捲る凜太郎を強引にというより命令口調で説得したハダシは、親友と映画部以外の特技をもつ生徒たちと<打倒ラブコメ>を旗じるしにして、秋の文化祭でのゲリラ上映を目指して暑い夏休みに撮影を開始する。が、なにしろ映画撮影に無知なスタッフとの作品作りはテンヤワンヤの失敗ぶりがつづく中、ハダシの熱烈な指導で仲間たちの結束が強まりしだいに本格的になっていく。凜太郎の武士役も様についた頃、凜太郎のハダシに対しての尊敬する思わせぶりな言動にハダシは「?」を感じながらも撮影は順調に進められていく毎日がつづいていく中、映画以外に興味もないハダシは、颯爽とした凜太郎の武士ぶりになぜか<胸キュン>を覚える自分に戸惑っていた。そして念願の時代劇作りで心の絆が結ばれた仲間たちとの暑い熱い夏が過ぎ、完成した作品を上映する予定の秋の文化祭が開始されたが…。
若い子が好む<胸キュン物>でなく、憧れの「座頭市」のような時代劇を愛する少女の映画作りと、タイム・トラベラーSFをミックスした過去と未来を今の世界にドッキングさせたポップな内容は、時代劇の衰退への嘆きと同時に未来の世界には映画は存在するのか?という映画界にとって頭の痛いテーマをさりげなく示しながら、それを軽やかな青春映画に仕立て上げるという試みには感心させられた。しかし作りの内容に、肯定的な人と否定的な人がくっきりと分かれるのではないか、と思われる作品となっていたのだ!ぼくとしては、たぶん低予算で作られたと思うこの作品に前者寄りに組したいのだ!
ぼくのチケット代は、2100円出したい作品でした。
星印は、3ッさしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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