一度見たら絶対忘れられない!独創的な作風で世界中から愛される、南米コロンビアの御年92才の画家フェルナンド・ボテロの魅力に迫るドキュメンタリー映画です。人間も静物も、なぜかしらぶぁ~んとふくらむ“ボテリズム”なユニークな造形は、フェルナンド・ボテロを知らない人もどこかでお目にかけているはずです。この作品は、このフェルナンド・ボテロの創作活動とその人となりの軌跡を追いかけるドキュメントな内容となっています。
幼いころに愛する父親を失った貧しい環境の少年が、闘牛学校に通いながら大好きなスケッチ絵を描いていた原点から、憧れの画家になるためヨーロッパに渡りイタリア・ルネッサンス絵画の豊満な肉体描写に感銘を受け、よりふっくらとした【12歳のモナ・リザ】のMoMA[ニューヨーク近代美術館]展示(29歳)で一躍注目を浴びて、そのユニークな具象画スタイルでアート界の頂点を極める過程を、ボテロ本人や家族やキュレーターの言葉を通して、ボテロの数々の絵画や彫刻を紹介されていくのだ。一見順風満帆に見える作家生活だが、具象画にこだわるボテロに対しての現代美術の抽象主義派閥からの批判や、愛息の交通事故死、その事故で自身の利き手の一部を失う悲劇に遭い、精神的にも肉体的にもむしばられ作家生命が危ぶまれた衝撃の過去も明かされる。
決して己を高ぶらず、自身に与えられた天賦の才に素直に感謝しつつ語るボテロの姿は、見る私らをボテロの作品同様ほっこりさせてくれるドキュメンタリーな内容になっているのだ。紹介される数々の作品には【アブグレイブ】シリーズ(カリフォルニア大学バークレー校に寄贈)のような悲しい作品も含まれるが、それすらもボテロの作風で描かれており、見る人の悲しみをいや増させるのだ!絵画や彫刻制作以外は全く無欲のボテロの人となりが、よく分かるドキュメンタリーとなっている、お勧めできる作品となっているのです。
ぼくのチケット代は、2600円出してもいい作品でした。
星印は、4ッ半さしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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