立川志の輔の創作落語を基にした、精密な日本地図を作製した伊能忠敬にまつわる秘話のお話しです。
千葉県香取市。市役所の総務課に勤務する池本(中井貴一)は、市の観光を浮上させる案として、郷土が生んだ伊能忠敬<香取市では尊敬を込めて【ちゅうけいさん】と呼んでいる>をNHKの『大河ドラマ』の主人公に起用してもらうことを提案する。なんとそれが採用されて、気難しい脚本家の加藤(橋爪功)に依頼する。だが、完璧主義の加藤の調査で、伊能忠敬が地図感性の3年前に亡くなっていたという驚愕の事実が判明する。しかし加藤は、伊能忠敬の志を継いだ無名の弟子たちが、必死で地図の完成をする3年間の努力を伊能忠敬を抜いて<何しろ忠敬は亡くなっているので>描いていく。それでは肝心の伊能忠敬が登場しないことになる。困惑する池本たち総務課の面々。
『大河ドラマ』制作にドタバタしながら懸命に奮闘するコミカルな現代人のあり様と、時空を超えて200年前の江戸時代の精緻な日本地図作成努力する無名の弟子たちの姿を、織り交ぜ描いていくこの作品は、主役の中井貴一や松山ケンイチ、北川景子をはじめ主要キャストを演じる俳優たちが、現代と江戸期の一人二役を務める遊び心ある演出になっています。前半の現代では池本たちの『大河ドラマ』への行動をコミカルな演出で笑わせ、後半の江戸時代の伊能忠敬亡き後、忠敬の元妻エイ(北川景子)を中心にして、弟子たちが残りの地図を作成していく姿をシリアスな演出で描いていく使い分けは、この作品が伊能忠敬への尊敬がよく表現されていたと思う内容になっていたのです。ラストの完成した日本地図の巨大で精密な図のシーンに、感動するはずです!
ぼくのチケット代は、2300円出してもいい作品でした。
星印は、伊能忠敬と無名の弟子たちの尊敬を込めて4ッさしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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