大企業の横暴に立ち向かう零細企業の心意気を描いて、人気のある池井戸潤の同名の原作を、三木孝治が監督した作品です。
父親の経営する零細町工場が、銀行から融資を断られたために倒産し、過酷な少年時代を送ったアキラ(竹内涼真)はひどい状況下で、ある銀行員から親切な対応を受け、その思いを胸に抱えて東大を卒業して日本有数の大銀行に入社した若者だ。一方、大企業の御曹司でありながら、血縁の生臭いしがらみを嫌うあきら(横浜流星)は社長の座を拒絶し、東大を経てアキラと同期入社した沈着冷静な若者。人を救うことが銀行員の使命と思う熱い理想を持つアキラと、情け心を排して冷徹に仕事をこなす上層階級のあきら。正反対の信念を持つ2人は真っ向から対立し、出世競争のライバルとしてしのぎを削る仲となっていく。だが、アキラは自分が自分が受け持つある案件で、自らの理想と信念を押し通した結果、地方へと左遷されてしまう。しかしめげない心のアキラは、地方独特のヴェンチャー育成に寄与した功績を買われて本社に戻ってくる。そして、アキラと違って切れ者として順調に出世するあきらにも、親族同士の嫉妬からの醜い争いが始まり、あわや倒産という一大事が発生する。あきらが自ら捨てた大企業の倒産となれば、数千人の社員の家族が路頭に迷う羽目に陥るのだ!あきらはここに至って一大決心をする。その事態を見ながらアキラも動きはじめる。「アキラとあきら」宿命の運命を持つ、2人の人生が再び交差していくのだが・・・。
巨大銀行で働く「アキラとあきら」2人の【情と理】の心を中心に据えて描写していくこの作品は、娯楽作品としては可もなく不可もなく楽しみながら見られる演出となっていた。物語の核を、アキラ扮する竹内涼真とあきら扮する横浜流星に絞る演出により、誰もが楽しめる見やすい内容となっていたのだ。むつかしい小理屈はこねずに描写していく手法は、娯楽映画の雄である三木孝治監督の腕の冴えによって成功していたと思う。ツッコミ所は多々あるものの、そんな野暮なことは言わずに竹内涼真と横浜流星のカッコ良さを楽しんで見る作品と思ってください。
ぼくのチケット代は、2200円出してもいい作品でした。
星印は、3ッさしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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