聴覚障害でありながらプロボクサーとしてリングに立った小笠原恵子さんをモデルにした作品です。彼女の不屈の生き方に着想をを得て、三宅唱監督がオリジナルなドラマとして組み立てた作品となっています。この作品は、ベルリン国際映画祭(宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』でアニメーション映画として、世界ではじめて最高賞を獲得した記念碑な映画祭なのです!)で、プレミア上映されて数多くの賛辞が与えられた映画なのです。
再開発が進む東京の下町の一角にある古めかしいボクシングジムで、ケイコ(岸井ゆきの)は今日もトレーナー(松浦慎一郎)を相手に、相手の動きを<目を澄ませて>とらえながらボクシングの基本的な動きを練習している。生まれつきの聴覚障害で両耳が聞こえないケイコは、ホテルの清掃員として動きながら、それ以外はボクシング漬けの毎日を送る女性だった。そんなケイコを温かい目で見るジム会長(三浦友和)や、専門トレーナーの後押しもあって、ケイコはプロボクサーのライセンスを取得して、日々絶え間ない努力をしている。ケイコの母と弟は応援しながら、取り立てて才能がないケイコの試合をハラハラしながら見ている。そんなある日、ケイコはジムが閉鎖されることを知ることになる。ケイコの努力を知る、ジム会長の往年のボクサーとしてのダメージからくる体の不調や、コロナ禍による興行成績の激減が原因であった。ケイコの努力を知るジム会長やトレーナーは、新たなジムにケイコを移籍させようとするが・・・。
まるでドキュメンタリー映画を見るような、ドラマティックな演出をせずケイコの毎日を淡々とした描写で描いていく三宅監督のこの作品は、ケイコをヒーローとして扱うとはせずに、ごく普通の等身大の若い女性としてのケイコとして描いていく。それだけに見ている我々は、ケイコの日常生活の一挙手一投足の描写で、ケイコの心を忖度しながら見てそして考えていくことになるのです。ケイコを演じる岸井ゆきののボクサーとしての本格的な動きに、役者としての根性を感じる演技は心から称賛します!!
ぼくのチケット代は、2400円出してもいい作品でした。
星印は、4ッさしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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