OBS大分放送

オットーという男

記事 >  OBSラジオ > 情熱ライブ!Voice > 衛藤賢史のシネマ教室 > オットーという男

   2023/03/14

衛藤賢史のシネマ教室

スウェーデン映画『幸せなひとりぼっち』<原作小説・フレデリック・バックマン>に魅了されたトム・ハンクス夫婦の企画による、ハリウッドのリメイク作品です。舞台をアメリカの小市民階級の住む町に設定して、頑固者な初老の男の古き良きアメリカ市民の道徳観を維持しながら奮闘する内容になっています。

まだ昔ながらの地域の人々との付き合いを大事にする町に住む、初老のオットー(トム・ハンクス)は、3年前に最愛の妻を亡くし長年勤めた会社を退職し、誰にも迷惑をかけず愛する妻の後を追って自らの人生に決着をつけようと思っているのに、最後の日まで厳格に町のルールを破る人たちの見回りをしていた。しかしその日、通りの向かい側に引っ越してきたばかりの、フレンドリーな移民の家族のせいで、死にたくも死ねない羽目になる。それも一度じゃなく二度、三度も偶然に!!何事も自分の決めたルールに厳格なオットーは、偶然の邪魔だが調子が狂い頭を抱える。その一家は、人のいい夫と、妻・マリソル(マリアナ・トレビーニョ)、ふたりの幼いお茶目な娘に三人目の子を大きなおなかに抱える陽気で人懐っこく、オットーと真逆の性格をしているが家族愛と地域の人々を愛する精神にあふれていた。かつて町の住人はお互いに何事も助け合って暮らしていたのを、再現するようなマリソル一家の互助精神あふれる生活態度に、いつしかオットーは死ぬのを忘れて世話を焼くようになる。マリソルの夫のケガによる入院での、小さな娘の子守や、マリソルの苦手な車の運転を教えながら、亡き妻の教え子で性転換した若者の世話を焼いたり、昔些細な事で仲たがいした古い友人の家庭のトラブルに対応するオットーの姿があった。死ぬのを邪魔した!この邪魔な一家との不思議な出会いと触れ合いを通して、頑固に昔ながらのスタイルを押し通すオットーは、もう一度生きていく希望を見つけていくのだった!!

よき昔のアメリカ人の魂を持つ几帳面で頑固なオットーと、性格は真逆ながら地域の人々との触れ合いを大事にする移民一家のマリソルとの出会いによる、自分だけが良ければいいと思う、今のアメリカのみならず世界中に横溢する【個人主義】をやんわりと反発するこの作品は、ユーモアにあふれながら我々の胸にギクッと突き刺さる佳作になっているのです。是非とも皆さんに見てもらいたいとお勧めしたい作品となっていたのです!

ぼくのチケット代は、2400円出してもいい作品でした。

星印は、4ッ半さしあげます。

5点満点中4.5点 2400円

©2024  Oita Broadcasting System, Inc. All Rights Reserved.