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   2023/03/28

衛藤賢史のシネマ教室

日本ミステリー文学新人賞を獲得した葉真中顕の社会派ミステリー小説を、検事と犯人の息詰まる対峙を中心にアレンジされた社会派ドラマです。

地方都市の訪問介護センター所長を務める男が、早朝このセンターで訪問介護を受けていた介護者の自宅から死体で発見される事件が発生した。家の中から介護を受けていた老人の自然死らしい遺体もある。県警は、センター所長の死体の状況から殺人事件として断定して捜査を行う。その結果、捜査線上に浮かんだのは、同じセンターで働く斯波宗典(松山ケンイチ)という中堅の職員だった。しかし、斯波は介護家族から慕われる献身的な介護士であり、センター職員からも絶大な信頼を受けていたのだ。この事件を担当する検事・大友秀美(長澤まさみ)は、大学の数学科を出て検察庁事務官となった異色の経歴を持つ部下(鈴鹿央士)と、斯波が勤め始めてからこの訪問介護センターが世話する老人の死亡率が異常に高いことを数学統計データから突き止める。一介の殺人事件よりもこのデータを重視する大友は、真実を明らかにするため取り調べで斯波と対峙する決心をする。すると斯波は真摯な態度で、自分がしたことは『殺人』ではなく『救い』だと言うのだ。その真面目で真摯な斯波の告白に戸惑う大友だが、検事の立場から鋭く斯波を糾弾しながら、斯波の言う『救い』の真意とは何を意味するのか、斯波に安楽死された家族を調査するうちに、社会的サポートでは賄いきれない介護家族の厳しい現実を知るのだった。42人の老人を安楽死させたと言うのに、データでは41人であり、残された一人に潜む斯波の悲しい過去とは・・・。

切ない映画なのですが、充分に評価したい作品となっているのです!!後期高齢者となった僕には胸に染みて見ました。原作を検事の大友と犯人の斯波との対峙を中心に据えたことによって、この切ない内容のテーマがくっきりと浮かび上がる作品となっていました。斯波を演じる松山ケンイチと大友を演じる長澤まさみの見ごたえのある好演によって、前田監督の狙い通りピシッと締まる社会派ドラマとなっていたと思います。「親子家族の『絆』が『呪縛』となる」と言う斯波のセリフが耳に強く残るのです!

ぼくのチケット代は、2400円出してもいい作品でした。

星印は、4ッ半さしあげます。

5点満点中4.5点 2400円

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