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丘の上の本屋さん

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   2023/04/04

衛藤賢史のシネマ教室

<イタリアの最も美しい村>の一つに数えられているチヴィテッラ・デル・トロント村を舞台にした、古本屋を営む老人とアフリカから移住した少年の読書を通しての心の交流をメインに、様々な趣味を持つ客とのつき合いを描いていく作品です。

イタリア中部の風光明媚な丘の上にあるトロント村で、小さな古書店を営むリベロ(レモ・ジローネ)は、店の前に置くコミック本を眺めている見知らぬ移民の少年エシエン(ディディー・ローレンツ・チュンブ)に声を掛ける。知的好奇心旺盛なエシエンを気に入ったリベロは、お金がないので本を買えないと言うエシエンに次々と店の本を貸し与え、本を読む知的楽しさを教えていく。エシエンもまたリベロの博識深い言葉の数々に惹かれ、リベロが段階を踏みながら貸し与える本で知的成長していく。村の憩いとなっているリベロの古書店には、コミック本から発禁本や初版本や難解な哲学本など様々なジャンルの本があり、様々な本好きが集まってくる。リベロの隣のカフェで働く二コラ(コッラ―ド・フォルトゥーナ)は、家政婦で女主人に頼まれていないのに、フォトコミック本を探してリベロの店に持ち込むことを生きがいにしているが、同時にリベロの健康具合を心配していた。『ミッキーマウス』コミック本から始まったエシエンの読書は、リベロの教えでみるみる上達していき、『ピノキオ』『イソップ寓話集』『星の王子さま』などへと進み、次は分厚い『白鯨』を「急がないでいいから」と手渡す。ゴミ屋をしている移民男がゴミ箱から見つけた1957年に書かれた若い女性の日記帳を興味深く読みながら、リベロは「今度は貸すんじゃなくて、君への贈り物だ」と一冊の本を手渡すのだった。ようやく『白鯨』を読み終えて感想を伝えに来た店で、エシエンが目にしたものとは・・・。

丘陵地区の美しい景色を背景に、中世のたたずまいを濃厚に残す石造りの歴史ある街並みのトロント村で流れる淡々とした内容のこの作品は、はげしく変転していく現代デジタル社会へのアンチテーゼとなっているのだ。好きな本に出合った時の目くるめくような気持になる読書への、アナログ的感情が隅々までいきわたる牧歌的静謐さがあふれる作品となっていたのです。国籍も老若男女を超えた、だれでも同じ手で触れられる紙のやさしい感触漂う読書への愛情が、画面上にいっぱい詰まった作品でした。

ぼくのチケット代は、2300円出してもいい作品でした。

星印は、4ッさしあげます。

5点満点中4点 2300円

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