天才的音楽家であるリディア・ターという女性指揮者の栄光と挫折を描く作品です。
アメリカの5大オーケストラで指揮者を務めた後、世界最高峰のオーケストラであるベルリンフィルで、女性として初の首席指揮者の座を獲得したリディア・ター(ケイト・ブランシェット)。あらゆる音楽に精通した天才であり、たぐいまれなプロデューサー力を併せ持つ能力により、音楽界の最高権力を持つ地位に君臨していた。ベルリンフィルでマーラーの【交響曲第5番】を首席指揮者として激しいリハーサルを繰り返しながら、ジュリアード音楽院でも講義を持つ超多忙な生活を送っていた。そんなターを公私共に支えているのは、恋人のベルリンフィルのヴァイオリン・コンサートマスターのシャロン(ニーナ・ホス)であり、ターの養女ペトラ―を一緒に育てていた。副指揮者の資格を持つフランチェスカ(ノエミ・メルラン)でさえも、自分のマネージャーとして使う、誰もが自分に従う王国に君臨するター。そんな中、自分が育てたクリスタという若手指揮者が自殺する出来事の訴訟事件が発生した。ターは自分がこの事件に巻き込まれることを恐れて、クリスタが自分に送ったメールをすべて削除することをフランチェスカに命じるが、なぜかメールは削除されなかった。思いがけない陰謀がターに静かに忍び寄り、ターの心の闇は少しずつ広がっていく・・・。
エンドクレジットであるはずのスタッフ紹介が冒頭からされながら、ペルーの先住民のイカロ「心の癒し歌」というか細い女性の歌が被さる、ミステリアスなファーストシーンから、この作品がただならぬ気配を感じさせるのです!!クラシック音楽のゴシップに精通する人にとって興味津々の会話シーンが全編を覆いながら進行する内容の数々に、クラシック音楽の素人である僕でさえも、そのスキャンダラスな会話にのけぞりました。そして、世界最高峰のオーケストラの最高指揮者(副指揮者など天と地の地位しかない)に登りつめる人は、最高の手腕と才能を持つ人だけに与えられる栄誉である絶対権力を持つ王様であることを知りました。全編に複雑な構成を張り巡らせながら、ターの心の軌跡を一人称的な描写で追いかけていく壮絶な内容となっているのです。ケイト・ブランシェットの鬼気迫る演技に拍手を送ります!
ぼくのチケット代は、2200円出してもいい作品でした。
星印は、4ッ半さしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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