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9 月 20 日 ON AIR!

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   2023/09/21

NO STAGE NO LIFE!

「No Stage No Life!」ステージナビゲーター★飯田裕美です。

9 月 20 日の放送もお聴きくださり、ありがとうございました(^^♪


本日は、私が先日鑑賞してまいりました「ラグタイム」の話題を中心にお届けしました。


『ラグタイム』は『ライオン・キング』、『キャバレー』などの名作が上演された 1998 年にトニー賞ミュージカル部門で 13 部門にノミネート、最優秀脚本賞、最優秀オリジナル楽曲賞など 4 部門で受賞した名作です。

ブロードウェイミュージカルの歴史の中でも大事な作品とされていて、日本ではなかなか上演許可が下りなかった作品でもあります。


写真①



私は今回、幸運なことに日本初演の初日を鑑賞することができました。

私の舞台好き人生の中でも大変貴重な一日となりました。


写真②



ストーリーは、20 世紀初頭、激動の時代のニューヨークを舞台に、苦境にあえぐ移民のユダヤ人、誇りを持って困難に立ち向かう黒人達、裕福な上級階級の白人、その 3 つの家族が、固い絆で結ばれ差別や偏見に満ちた世界を変えていこうとする群像劇です。


私は特に、「音楽の力」と「演出法」に心奪われました。

ミュージカル作品ですから「音楽」は在りきのものですが、ご出演は石丸幹二さん、井上芳雄さん、安蘭けいさんを筆頭とする、日本ミュージカル界

屈指の歌唱力を誇るキャストが揃ったことにより、その訴求力は圧倒的でした。

特に、黒人の井上芳雄さん演じるコールハウスの恋人サラ役の遥海さんが素晴らしかったです。

私は、今回遥海さんは初見だったのですが、震えが起こるほど胸に刺さる歌声でした。

また、そのサラの友人役で塚本直さんという方もご出演されていましたが、彼女の魂のこもった歌声は劇場の空気を一瞬にして変えてしまうほどのものでした。

若く新しい星を見つけたような気分になりました!

タイトルにもなっている「ラグタイム」とは、白人の行進曲のリズムに、黒人のシンコペーションのリズムを足した音楽のジャンルです。

「ラグ」は「ずれる」という意味があります。

音楽ジャンルをタイトルに据えたミュージカルですので、この「ミュージカル・ラグタイム」の「音楽」要素の高さは、一般的なミュージカルより高

いと思いますし、非常に難曲が多かったように感じます。

その中でも、オープニングに歌われるタイトルナンバー「ラグタイム」は、作品を象徴するビッグナンバーですが、全キャスト揃っての大合唱は一気

にその世界へと誘うシーンでした。

未だに気がついたら、このナンバーを口ずさんでいる自分がいたりするので、音楽の持つ力はすごいなぁと感じます。


四半世紀にもおよび、日本での上演許可が下りなかったのは、私たち日本が単一民族だからだとも言われています。

3 種の人種の表現ができないのではないかという懸念が大きかったようです。

振り返ると、日本の多くの人種を扱う舞台では、黒人役の方は顔を黒く塗った化粧をしたりという見た目に重きを置いた手法でした。

今回は、全員肌の色を変えるような化粧は施さず、衣装とダンス、歌やその佇まいによって人種を「魅せる」という手法でした。

ユダヤ人はグレーで暗めの衣装、白人は上から下まで真っ白な衣装、黒人は赤や緑黄色という原色のはっきりしたカラーを使っていました。

ダンスでもその違いは顕著に表れていて、白人は優雅に舞うようなダンス、黒人は動きの重心が低くて、リズムも後ノリ。ユダヤ人は身をかがめ、何かを覗うような不安と攻撃性が表現されていました。

今回は、アンサンブルが 17 名ですが、もうめまぐるしく早替えが展開されます。

早替えだけでも大変だと思いますが、その都度人種が変わりますから、歌やダンスもそれぞれの特徴を意識しながらということになり、それはもうすごい「演劇力」がないとできないことだと思い知らされます。

日本人にしかできない、「人種差別」をテーマにした作品となっていると身に染みて感じました。

「人種差別」というと、私にとってはどこか他人事のように感じていましたが、実際に目の前で繰り広げられる「差別」を観ていると、自分の横でも実際に起こっているあらゆる「差別」に気が付くこととなりました。

改めて深いテーマだなぁと感じました。


写真③


今回の演出は、藤田俊太郎さん。

蜷川幸雄さんの演出助手を務められていた方です。

上演前に藤田さんが「“人生は喜びに満ちている”ということを伝えられたら」とコメントされていましたが、その言葉を体現化したような美しいラストシーンは強く印象に残っています。

初日にはカーテンコール後にキャストの方々の挨拶があったのですが、白人の慈愛に満ちた母親役を演じた安蘭けいさんが、「この後を生きる子供た

ちが、いつかこの作品を観て“人種差別なんてしていた時代があったんだね”と話せるような世界がきますように」と涙を流しながら語られた言葉には、重さと深さがあり、理想と現実の違いを感じながらも、「よりよい世界への第一歩」を考えていく機会を与えられたと感じました。


写真④

偶然にもこの日の真由美さん、そして私も「黒とグレー」のお洋服でユダヤ人カラーでした。



お届けした曲

「ラグタイム」より、

「Ragtime」(ブロードウェイオリジナルバージョン)

次回の放送は、10 月 4 日(水)10 時 10 分頃です。

ぜひお楽しみに(*^-^*)


ステージナビゲーター★飯田裕美

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