本屋大賞受賞の町田そのこの同名小説を、成島出監督が映画化した作品です。主人公の故郷が大分県の佐賀関半島となっているのです。
幼い頃から、実の母親に言われのない虐待を受け生きていた三島貴瑚<キコ>(杉咲花)は今、祖母の故郷である大分県佐賀関半島の小さな町の一軒家で住んでいる。ある日、キコは母親から『ムシ』と呼ばれ虐待される、声を発することのできない幼い少年(桑名桃李)と出会う。かつての自分の境遇を重ね合わせたキコは、幼い少年にあるクジラの鳴き声の話を語る。キコの声なき【救い】を求める心を理解した岡田安吾ことアンさん(志尊淳)と呼ぶ優しい心根の男性が話す【52ヘルツのクジラ】という、ほかのクジラが聞き取れないほどの高い周波数で鳴く孤独なクジラの鳴き声だった。キコは少年に話しながら3年前からの出来事を思い出す。絶望の淵に立つキコを救ってくれた、アンさんとキコの親友・美晴(小野花梨)とのなつかしく救いの甘美の思い出を。ある事情から、東京から誰にも言わず故郷に戻ったキコを、必死で探して佐賀関に尋ねてきた美晴はキコの悲しい心中を理解していた。一緒に暮らしはじめたキコと美晴の思いは、アンさんのやさしい心根を継ぐこと。声を発することのない『ムシ』と呼ばれる幼い少年を人間に戻すために、少年の描いた絵を頼りに、小倉に行き親しかったオバさんを探すことに・・・。
家庭内暴力・ジェンダーなどの社会問題を盛り込みながら展開するこの作品は、だれにも理解されない鳴き声の【52ヘルツのクジラ】の悲しみをモチーフにする、ヒューマンなドラマとなっているのです。大分県の佐賀関が主要な舞台となるこの作品は、映像の数々の多くが大分に住む人々にとってうれしい気持ちにさせられる内容になっているのです。つたない大分弁を使うのがほほ笑みさせられることでしょう。ストーリー構成は長編小説を上映時間の制限のある映画にする場合の常とした、多少の説明不足がある内容となっているのを理解してみてください。
ぼくのチケット代は、2200円出してもいい作品でした。
星印は、3ッ半さしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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