熊谷博子監督が8年に渡って、ハンセン病回復者の【宮崎かづゑ】さんを撮りつづけたドキュメント作品です。
瀬戸内海にある国立長島愛生園に住む【かづゑ】さんは、この愛生園に10歳で入所してから約80年、ずっとこの島で生きてきた。1954年に、2つ年上の宮崎孝行さんと結婚。旧姓の上田から宮崎かづゑとなり、夫の孝行さんと、お互い助け合い仲睦まじく暮らしてきた。熊谷監督は、この作品を撮る初日に【かづゑ】さんからの<いい恰好していては本物は出ません。だからお風呂に入っているのも撮ってね>と言われ、彼女の覚悟を受け止め、そこから8年もの歳月愛生園に通うことになる。
この作品は、90歳になる【かづゑ】さんが買い物をするシーンから始まる。指のない手で、まるで健常者のように夕食を作るため屈託ない態度で買い物をしながら店主と話し、当たり前のように店主が【かづゑ】さんの財布からお金を数えて品物を渡す様子から、【かづゑ】さんがいかにこの島で<ちゃんと生きてきたこと>を象徴させるシーンを映し出す。78歳でパソコンを覚え、84歳になって初の著作になる『長い道』(みすず書房)を出版。90歳も半ばになった時、<できるんよ、やろうと思えば>と【かづゑ】さんは言う。愛生園の職員の手助けを借り、夫の孝行さんと岡山に「第九」のコンサートを聞きに行ったり、孝行さんの故郷福岡県を訪ねたり、【かづゑ】さんの故郷岡山県の母の眠るお墓を訪れたり、不自由な身体をモノともせずパワフルに動く夫婦の姿に、心からの感謝を与えてくれる作品となっているのです!!
ぼくのチケット代は、2300円出してもいい作品でした。
星印は、3ッ半さしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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