アカデミー賞7部門を獲得した、クリストファー・ノーラン監督の最新作です。原子爆弾の開発に成功し『原爆の父』と呼称された、理論物理学者のロバート・オッペンハイマーを描く伝記作品です。
1942年、ドイツのヒトラーが原子爆弾の開発をしていると知ったアメリカは、天才理論物理学者と謳われたカリフォルニア大学バークレー校教授・J・ロバート・オッペンハイマー博士(キリアン・マーフィー)を38歳の若さで、ドイツに対抗するするためアメリカの極秘プロジェクト『マンハッタン計画』の【ロスアラモス国立研究所】の初代所長に任命する。アメリカ原子力委員会の委員長と同時に将軍であるルイス・ストローズ博士(ロバート・ダウニー・Jr.)は、野心家でアメリカの原子力関係を支配する大物だが、自分の支配下に置こうと抜擢したオッペンハイマーの天才的頭脳を誇る傲慢な態度にはげしい嫉妬心を燃やすようになる。だが『マンハッタン計画』のロスアラモス国立研究所の現場を指揮する、工学博士のレズリー将軍(マット・デイモン)は、アメリカの天才学者が集うロスアラモス国立研究所のなかでも傑出した頭脳を持つオッペンハイマーを信頼している。1945年5月、ドイツの降伏で原爆使用のターゲットは日本となる。同年8月、原子爆弾は広島・長崎で実施され第二次世界大戦は幕を閉じる。以降、ソ連との冷戦時代がはじまり、アメリカで『赤狩り』時代がはじまる。生物・植物学者の妻キティ(エミリー・ブラント)はオッペンハイマーを憂慮する。昔の恋人で精神科医のジーン(フローレンス・ピュー)は共産党員で、オッペンハイマーの弟で素粒子物理学者フランクも共産党に好意を持つことを知りながら『マンハッタン計画』に参加させていたのだ。ジーンの憂慮は当たり、オッペンハイマーは1954年ソ連のスパイ容疑をかけられ、政府の聴聞会で『共産主義者』とされ、大統領により全ての国家機密から隔離、政府公職追放が決定され晩年までFBIなどの激しい監視下に置かれることになる。
クリストファー・ノーラン監督は、この作品で単なる伝記を描くのでなく、人間の飽くなき欲求から起こる現代科学社会の悲劇を描いていくのです。オッペンハイマーの裁かれる現在の心の内を白黒画面で、活動する過去をカラー画面にして、時間軸を交互に併用する画面構成はノーラン監督ならではの手法でした。
ぼくのチケット代は、2400円出してもいい作品でした。
星印は、5ッさしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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