世界で17万人の心臓病に苦しむ患者の命を救ったIABP(大動脈内バルーンパンピング)バルーンカテーテルの誕生にまつわる実話を映画化した作品です。
1970年代、小さな町工場を経営する坪井宣政(大泉洋)と妻・陽子(菅野美穂)の三姉妹の次女・佳美(福本莉子)は、先天的な心臓疾患を抱えており、どこの医療機関に掛かっても【余命10年】と診断された。この悲しく厳しい医療の現実を突きつけられた宣政は、愛する娘のために自ら【人工心臓】を作ることを決意する。しかし、医療の知識も経験もない状態からの医療器具開発は、一から物を作る仕事に長けた職人気質の宣政でも限りなく不可能に近い仕事となる。日本で著名な心臓病の専門医を訪ね、膨大な資金が必要と言われれば自ら資金繰りをし、有識者に頭を下げ、宣政と陽子は工場内に私設の実験施設を作り一心に医療器具の勉強に励み【人工心臓】の開発に励む。が、時は刻々と過ぎ佳美は高校卒業時期を迎え、命のタイムリミットが間近に迫る。佳美は宣政の助けになりたいと経営する町工場に勤めながら、宣政に心臓病に苦しむ患者のため、自分の先天性の心臓病には使えないが、外国製のバルーンカテーテルを日本人の体形に合う器具に改良することを進言する。そして、宣政が考えた決断とは・・・。
自分の娘の難病を治したい!と医療に関してまったくの素人である町工場を経営する父親と母親が医療器具を開発していく献身的愛情を柱にして、繊細な医療器具の開発の難解さを描くこの作品は、日本人が世界に誇る伝統的な職人気質の、一から物を作る【物作り】の凄さを知らしてくれるのです!!この話がフィクションでなく、実話を基にした作品であるのに拍手を贈ります。家族を愛し、人間を愛し、【命のカテーテル】で世界の難病患者、17万人の命を救った医療器具を作った人が医療知識のない全くの素人職人であることに日本人として誇りに思う作品なのです。
ぼくのチケット代は、2400円出してもいい作品でした。
星印は、3ッ半さしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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