マイケル・マン監督による、イタリアの自動車メーカー社の創業者エンツォ・フェラーリの苦闘時代を描く作品です。ブロック・イエーツの『エンツォ・フェラーリ・跳ね馬の肖像』を原作に、私生活と会社経営で窮地に陥った59才のエンツォ・フェラーリが起死回生をかけ挑んだレースの真相を描いていく作品です。
1957年、夏。レース・ドライバーを経て、卓越したカーデザイナーとしてけた外れのスピードを出すフェラーリ社を創業した創始者のエンツォ・フェラーリ(アダム・ドライバー)は、共同経営者の妻・ラウラ(ペネロペ・クルス)との間に生まれた最愛の息子ディーノを難病で前年に亡くし、愛人・リナ(シャイリーン・ウッドリー)との間に生まれた息子ピエロとの二重生活を、ラウラに知られて夫婦生活は冷え切る事態となる。<カトリックのイタリアでは離婚は認められないので、妻以外に産ませた子供は婚外子として扱われ跡継ぎになれない法律があるのだ>さらにそれに加えて会社の業績は極度の不振<フェラーリは車の量産をせずに世界中の富豪だけに売る方針>によって破産寸前に陥り、イタリア以外の有名競合会社からの買収の危機に瀕していたのだ。再起を誓うエンツォ・フェラーリは、イタリア全土1000マイル<約1600km>を300キロ近いスピードで走り縦断する過酷なロードレース【ミッレミリア】に挑むが・・・。
謎に包まれたエンツォ・フェラーリの私生活の一端を、1957年59才の時期に絞り、妻ラウラと、愛したリナとの息子ピエロとの複雑な男女関係の愛憎の機微をドラマの中心に据えて描く、マイケル・マン監督の冷めた目線の演出力の旨さによって、男女間の愛憎の悲しさと業の深さを感じる作品でした。そして、ラストのクライマックス・シーンで描く【ミッレミリア】のカーチェイスの、手に汗握る迫力満点のレースシーンのすごさに圧倒されるでしょう!!この【ミッレミリア】は、この1957年以降は開かれていません。それはこの作品を見た人にだけ分かるのです!
ぼくのチケット代は、2300円出してもいい作品でした。
星印は、3ッ半さしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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