『北の国から』などの作品に代表される倉本聰の脚本を、『Fukushima50』の若松節郎が監督した作品です。倉本聰が長年思い描いた“美”とは何か?を具現化していく作品となっているのです。
日本が世界に誇る画家・田村修三(石坂浩二)の展覧会で、小さな町の美術館から借り上げられた田村の作品が、多くの鑑賞者の目を引いている。しかし、田村はその絵を見て顔色を変え「これは私の絵でない」と言う。贋作だとの報道が過熱する中、貸し出した美術館の館長は報道の過熱で自殺する。その頃、小樽で全身に刺青が彫られている牡丹という女性(清水美沙)の自殺体が海に浮かんでいた。牡丹は肌の衰えに悩み、若く肌の綺麗なアザミ(菅野恵)という女性が全身に刺青するのを承知するのを見て、華麗な刺青の“美”の後継者として命を託したのだ。贋作と刺青を結んでいたのは、かつて田村を凌ぐ新進気鋭の天才画家と称されながら、ある出来事から姿を消した津山竜次(本木雅弘)だった。北海道で漁師をしながら刺青師をしていた父に、荒れ狂う下北半島で遭難死され、貧しい境遇の中、竜次は父の画才と刺青の腕を有した天才だった。苦しい生活で美術大学に進み、田村と双璧され安奈(小泉今日子)と愛し合うが、竜次は安奈の前から忽然と消え、寂しさから安奈は田村の妻となっていた因縁の過去があった。イタリアに逃れ、スイケン(中井貴一)と称するヤクザな性格の料理人と出会い意気投合したふたりは行動を共にし、スイケンは竜次の天才の腕で本物以上の贋作を描く絵を売るマネージャーを務めていた。その一つが田村の絵を凌ぐ贋作であったのだ。だが竜次の気持ちは贋作ではなく、本物の絵を上回る作品と思う“美”の探求者の意識であったのだ。もう会うことはないと思っていた竜次と安奈は、スイケンの手引きで小樽で再会を果たすが、病は竜次の躰を蝕んでいた。わずかに残された命の時間の中で想う竜次の気持ちとは・・・。
贋作事件を通して“美”とは何か?形而上精神をドラマで描いていくこの作品は、学者や評論家が決める世界ではなく、それぞれの人間の目に映る美しさや感動する素直な気持ちを代弁していくのだ。少し分かりづらい内容だが、その意識の高さを評価したい作品でした!
ぼくのチケット代は、2200円出してもいい作品でした。
星印は、3ッ半さしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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