両親を早く失い、手を取り合い生きてきた兄弟の不思議な体験を繊細な筆致で描き、直木賞を受賞した朱川湊人の同名小説を、前田哲監督が映画化した作品です。
大阪の下町で暮らす加藤俊樹(鈴木亮平)とフミ子(有村架純)の兄弟。やさしい父を幼い頃事故で失い、母(安藤玉恵)の内職で育った俊樹とフミ子は、10代で母も亡くして、俊樹は高校中退して町工場に勤めてフミ子を守り暮らしていた。成長した俊樹と、大学に勤めるフミ子を、町工場の社長や従業員も温かい目で兄弟を見守ってくれ、亡き父が愛し、俊樹の幼なじみの駒子(ファーストサマーウイカ)が父親と経営するお好み焼き屋『みよし』は兄妹の心から寛げる場所となっていた。その『みよし』でフミ子は、同じ大学の動物行動学者で<鴉の生態>を研究する中沢太郎(鈴木央士)から求婚され結婚するのを承知する。親代わりの兄として妹のフミ子を守ってきた俊樹は、少し変わった研究をするが誠実な態度の太郎を認め、フミ子との結婚を認める。ハラハラしながら兄弟を見守ってきた駒子をはじめ町工場の人々は、心から安堵し祝福する。やっと肩の荷が下りるはずだった俊樹だが、遠い昔にふたりの秘密として心に堅く封印したはずのフミ子の22年前からの【記憶】の片隅に眠る、俊樹とフミ子の見知らぬはずの【最愛の娘を失った、ある家族】の若い女性の【記憶】を持つフミ子の心が【覚醒】する。フミ子が導かれるように作る【花まんま】とは・・・。
ある異常現象を軸として紬むられていくこの作品は、すべての登場人物がやさしい心根を持ちながら、それぞれの異なる【愛】の姿を描いていくのです。詳しく説明すればネタバレになるので控えます。一つだけ言えるのは、劇中で人間に嫌われる鴉と意思の疎通ができるという、動物学者の太郎の奇妙な多様の愛とかが、それに当たるのです。異なる【愛】の力がすべてに結ばれた場合に起こる【奇跡】の物語となっているのです!!
ぼくのチケット代は、2200円出してもいい作品でした。
星印は、3ッさしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
©2025 Oita Broadcasting System, Inc. All Rights Reserved.