自由奔放に生きるトップモデルから、20世紀を代表する報道写真家に転身し、二次大戦中に数々のスクープを写真に収めた実在の女性、リー・ミラーの数奇な人生を描く作品です。『タイタニック』(97)でブレイクしたケイト・ウィンスレットが、製作・主演の作品です。
1938年【第二次世界大戦の前年】。南フランスの避暑地で、アメリカ人でヨーロッパで活躍するトップモデルのリー・ミラー(ケイト・ウィンスレット)は、ソランジュ(マリオン・コティヤール)や芸術家や詩人の親友たちと自由奔放な休暇を過ごしているときに、芸術家のローランド(アレクサンダー・スカルスガルド)と出会い恋に落ち同棲する。だが1939年、ヒトラーのポーランド侵攻で始まる二次大戦で、日常生活のすべてが一変してしまう。この惨状を記録しようと写真家の仕事を得たリー・ミラーは、アメリカ『LIFE』誌のフォトジャーナリスト兼編集家のデイヴィッド(アンディ・サムバーグ)とチームを組み、女性は立ち入る事が許されない戦場に、アメリカ軍属として特別許可を得て戦火の中に入る。1945年、リー・ミラーはアメリカ軍の従軍記者のフォトジャーナリストとして、女性ならではの繊細な感覚で戦場の兵士の表情や、ホロコースト痕跡のナチスの強制収容所などのポートレイトを次々にスクープしつづけていく。だが、悲惨な戦場の有り様や、強制収容所をカメラを通して見るたびに、リー・ミラーの心は静かに壊れていく自分を感じるのだった。それは、親友のソランジュの心が折れる体験や、戦争終結まじかで大衆からナチスに迎合したと言われた女性が髪を丸刈りにされる姿を写しながらさらに深くなっていく。ヒトラーが自死した当日、ミュンヘンにあるヒトラーのアパートの浴室で、衝動的にリー・ミラーは自ら裸で浴室に入る姿をデイヴィッドに撮らせて、悲惨な戦争の終わりを伝える有名な写真を撮る。
男性が起こした戦争の惨状を、女性の目を通して描いていくこの作品は、見る人の心に静かに沁み入る内容となっているのだ。
ぼくのチケット代は、2300円出してもいい作品でした。
星印は、3ッ半さしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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