井上ひさしが、実話から着想を得て「こまつ座」で公演した舞台劇を、平一紘監督が映画化した作品です。
昭和20年。太平洋戦争末期の時期。沖縄県伊江島は壊滅的な状況に陥っていた。伊江島の住人や、派兵された日本軍のほとんどが死亡した悲惨な状況の中、からくも生き残った、宮崎に妻子を残して派兵された山下一雄少尉(堤真一)と、伊江島から出たこともない若い新兵・安慶名セイジュン(山田裕貴)は、米軍の激しい銃撃に追い詰められ、セイジュンの知恵で大きなガジュマルの木の上で身をひそめる。米軍の圧倒的な戦力に、山下少尉は日本軍の援助が来るまで、ガジュマルの木の上で待機することにする。軍人魂の強い山下少尉と、現地で徴集されたセイジュンのどこか呑気で人のいいコンビの気質は嚙み合わないままに、日本軍の援助が来るまでガジュマルの木の上で身をひそめる。たったふたりの木の上の軍隊として、恐怖と飢えに耐えつづける。やがて戦争は終結するが、木の上で身をひそめるふたりは、その事実を知るすべもなく、2年に渡って木の上で“孤独な戦争”を続ける。米軍の残した缶詰などを漁るセイジュンを見ながら、敵の食料を食べることを拒否する山下少尉は、飢えのためやつれていく。かみ合わぬふたりの仲のまま、ふたりが島で知ることになる戦争とは・・・。
諧謔味を盛り込みながら、破壊することしかない戦争に巻き込まれた庶民が体験する、小さな島を一つの縮図として描いていくのだ。沖縄出身の平一紘監督が、全編沖縄ロケで完成させたこの作品は、堤真一扮する軍人気質の強い将校と、現地で招集された戦争を知らない朴訥な青年を演じる山田裕貴の、ふたりの演技がこの作品を出色の出来にしているのだ!
ぼくのチケット代は、2300円出してもいい作品でした。
星印は、3ッ半さしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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