幅広い階層に人気を得る東野圭吾の小説『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』を、『コンフィデンスマンJP』シリーズの田中亮監督が映画化した作品です。
風光明媚な景色を売り物に、観光客を呼び込もうとした小さな町が、コロナ禍で客が遠のき、町に住む若者たちが企画した、この町出身の人気漫画家・釘宮(成田凌)のアニメ化された『幻脳ラビリンス』の背景の景色に、この町の風景が描かれた事を売り物にした、町おこしの運動が始まっていた。そしてこの小さな町で、多くの教え子に慕われていた元・中学教師・神尾英一(仲村トオル)が何者かに殺害される。東京に住む神尾真世(有村架純)は、父の訃報を受け実家のある町に帰ってくる。真世は2カ月後に、中條健太(伊藤淳史)との結婚を控えていた。父はなぜ?殺されたのか知りたい真世の前に、かつてラスベガスで名を馳せたマジシャンの叔父・神尾武史(福山雅治)が現れた。卓越したマジック(+手癖の悪さ)とメンタリスト級の巧みな人間観察と誘導尋問を駆使して勝手に姪・真世をバディにして、武史のたった一人の理解者だった兄・英一が殺された殺人事件の謎に挑む。人たらしの名人のマジシャンの武史は巧みなマジックを使い、バディの真世を困惑させながら事件の真相に近づくのだが、そこには・・・。
町に住む若者たちの【町おこし】の運動から派生した、元・中学教師の殺人事件を、教師の実弟のマジシャンと教師の娘がバディを組み、鮮やかに殺人事件を解決していくこの作品は、地方の何の取り柄の無い【名もなき町】に住む若者たちの哀しみと、【町おこし】の運動と絡ませた『殺人事件』を描いていくのです。ただ演出の重点は主演の福山雅治が演じる【ブラック・ショーマン】のマジックに置いているので、町の若者たちの人間関係の描写が浅いのが欠点となっているのです。犯人を特定させないために数多くの容疑者の怪しい言動で、見る人を目くらます演出のあざとさを感じる作品でした。
ぼくのチケット代は、2000円出してもいい作品でした。
星印は、2ッ半さしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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