『ミッドナイトスワン』の内田英治監督が、<真夜中シリーズ>と銘打つ作品の二作目です。
小学生の娘と保育園児の息子を持つ、シングルマザーの夏希(北川景子)。狭いアパートの一室で仲睦まじく暮らしているが、家計は火の車。借金だらけの暮らしで、夏希は一日中安い賃金の日銭を求めて駆けずりまわるが、周りの劣悪な環境の中、危ない仕事などはしない潔癖な心根を持つ女だった。だが夜の仕事の帰り道で、ヤクの売人が襲われるのを目撃した夏希は、こぼれたドラッグを拾い、ヤクを求める人たちに売ってしまう。バイオリンを学ぶ娘の高額な費用が欲しかったのだ。その行為がヤクを売る組織の目に留まり、夏希は暴行を振るわれ路上で倒れた所へ、女性格闘家の多摩恵(森田望智)に助けられ『売り上げの半分をくれるなら守ってやるよ』と持ち掛けられ仲間になる。貧乏暮らしのクラブに所属する多摩恵は、幼馴染で恋人の池田海(佐久間大介)の紹介で、ヤクの元締め・サトウ(渋谷龍太)に会い気に入られ、夏希とコンビを組み正式な売人となる。夏希は子供たちを愛してくれる多摩恵を、信頼できる仲間として組む。何でも有りの格闘技の試合で、大好きな多摩恵を応援する子供たちの無邪気な姿に、その脆い束の間の幸福を感じている夏希の姿がそこに有った。しかし、ある女子大学生の死をきっかけに、夏希と多摩恵の運命は思わぬ方向へ転がりはじめる・・・。
社会の底辺に住む幸薄いふたりの女性の友情を活写するこの作品を内田監督は、切ないほど明るく描いていくのだ、そしてその描写が明るいだけに暗転する悲しみが際立つのだ!!糾弾しない描写が見る人たちを深く考えさせる作品となっているのだ。北川景子の汚れ役の好演も凄いが、森田望智の格闘技の試合シーンのリアルな凄さや役柄にピッタリの演技が、この作品を一段上の作品としてのレベルをアップさせている。
ぼくのチケット代は、2300円出してもいい作品でした。
星印は、3ッ半さしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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