ベルリン国際映画祭で銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞した作品であり、ヨーロッパ各国で大ヒットした作品が遂に日本に上陸した。
独自のユーモア精神を持つWアンダーソン監督の才気が、全編に縦横に散りばめられており、不思議と怖くない残酷さと笑いが巧みにミックスされた極上の極楽作品に仕上げられている。
物語の舞台となるのは、東ヨーロッパの架空の国ズブロフカ共和国。
美しい山々の合間に建てられたグランド・ブダペスト・ホテルのコンシェルジェのムッシュ・ダスタヴ・Hのエレガントで意味深のサービスを目当てにヨーロッパ中から裕福な貴婦人たちが集まっていた。
と言っても、それは1930年代の話。物語は、その話を30年後にこのホテルを訪れた有名作家が、ホテルのオーナーである大富豪家のゼロ・ムスタファから聞くことから始まる。プロローグから1985年の年老いた作家の独白、そして1968年にホテルでゼロ氏から作家がムッシュ・グスタヴ・Hの波乱万丈の物語を聞き始めると、時代は1932年へと遡り、パート5に及ぶムッシュ・グスタヴ・Hと孤児になりホテルのベル・ボーイとして働いていたゼロのスリリングな行動が展開される、という内容となる。
まず、その流れを理解して見ないと「えっ?なんだこの出だしは??」と頭が混乱する恐れがあるので蛇足だと思うが言っておくことにする。
そのパート5に分けての内容は、ムッシュ・グスタヴ・Hと親密な関係の老伯爵夫人が殺され、遺言で一枚の名画を贈与されたばかりに殺人の疑いをかけられたグスタヴは逮捕され刑務所に。脱獄したグスタヴはゼロとコンシェルジュで組織された秘密結社の仲間隊の協力でヨーロッパ中を逃げ回りながら、無実の照明を探していく、という流れをテンポよく整理していくのだ。
淡い色調のカラーに合わせるかのように、シュールにそしてスマートに(ある意味)酷い内容をクスクス笑いながら見せていく演出術が冴えわたり、こんな話を100分間でぎっしり詰め込む知的センスに脱帽する作品であった。
お洒落な映画とは、こんな映画のことを言うのだ!ということを思わせてくれる作品となっているのだ。一見することをお勧めしたい映画ですよ!
ぼくのチケット代は、2,400円を出してもいいと思う作品でした。
星印は5つ差し上げます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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